Marriage blue.


























最近よく見る夢は、自分が結婚する夢。
でも、相手が誰だかちっともわからなくて、ウェディングドレスを着て、誰かを待ってるの。
暗示的な夢。ただ、わかるのは、自分が倖せだということ。
倖せな分、不安で、取り残された気分になるということ。
趣味の占いや薬作りでなんとかやってるけど、他の皆に比べて、自分があまりにも色褪せて見える。
結婚する夢。一心不乱にただ、倖せな夢。
夢占いをしてみても、心のわだかまりは消えない。
ほどけない・・・・・・心。





「ちょっとカナヤ! あんたまた私の服使ってナイフ投げの練習したでしょ!!」
「だってエル姉練習台の時もじっとしてねぇんだもん、しょうがないだろ?」
「そりゃ、じっとしてたら死んじゃうわよ! この服のボロボロさがそれを語ってくれてるわ!」
「いつも殺されそうなのはこっちだっつーの!!! 俺だってな、この前手裏剣で傷つけられた服、買ったばっかりだったんだぞ」
「あんたは男だから別にいーの!」
「なんじゃそりゃ!」

・・・いつもの風景。
エル姉とカナヤ兄が賑やかに喧嘩してるのを、私は苦笑して、窓から眺めてる。
ずっと昔は、私もお兄ちゃんにいじめられて、お姉ちゃんに助けてもらったりしてたけど、最近じゃこうして眺めてるだけだ。いつからか・・・いつのまにか家にいた、女顔のアナナス君が、そんな私にさりげなく声をかける。

「・・・相変わらずですね」

一緒に苦笑いを浮かべる彼は、何を考えてるのかよくわからない。

「本当、昔から全然変わらない」

多分、二人にだって色々あって、変わってないことなんてないんだろうけど、思わず口にしてしまうのはそんな言葉。それが当然のような、変な感じ。

「・・・なんでだろう」

ふと思ったことを、口にしてみる。

「・・・・・・? どうしたんですか?」
「あ、いや、なんでもない・・・」

いつも傍には、誰かがいる。
それがどんなに幸せなことか、私は知っている。
けれど・・・・・・幸せなことにさえ、何の意味もない。
そんなことを考えてる自分が、あまりにも、ただ・・・・・・。

(・・・なんでもない・・・・・・)

泣きそうな気がしたから、さっさと部屋を後にした。
平静を装うのは簡単だ。思いつめた顔なんて、誰にでも出来るんだから。





昔よく見た夢は、叫び声で目覚めそうなほど怖い夢。
トイレやお風呂が怖くて、一人じゃ眠れなかった。
眠ることが、あまりにも怖くて・・・・・・夢に怯えて、泣きもした。
けれど、今じゃどうだろう。
私はただ・・・・・・現実でない夢にしがみつきたがっている。
薬の調合をはじめてみたのは、薬草への興味だけだったけど、このところ睡眠薬をよくつくる。
闇に溺れそうな、眠れない夜から逃げ出すために・・・。


コレジャダメダ


どこかから、声が聞こえる。
副作用なんてとんでもない。節度を持って使用してるうちは、大丈夫。
眠れない時に、生活のリズムが乱れないように飲むくらいだから。


ソウジャナイ


・・・わかってる。貴方が言いたいことは。


ジャア、ナゼ


わかってたら、そうじゃなくちゃいけない?
わからなくて出来ないのは仕方ないけど、わかっててやらないのは最低だって聞くけど。
私はそうは思わない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ただ私は・・・私という流れに身を任せてるだけ。
だから、ね。
だから旅に出るんだと思う・・・。





近頃見る夢は、現実に程近く遠い。
結婚なんてきっと、一生出来ない。だって私は、こんなにも可愛くないし。
白馬に乗った王子様の、性格が良いとも限らない。
だから、夢に見るんだと思う。
結婚したいなんて、思わないから。
ただ、意味を必要としない夢の中で、暖かさを感じられればそれでいい。
誰かは、こんな私を哀れんだり、叱ったりするのかもしれない。
でも私は、倖せだから・・・・・・多分、ただそれだけ。
それだけでいいの、きっと・・・。






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