『ろうきんに期待すること』

講師:龍谷大学経済学部教授 石川両一氏

1993年2月6日

 

福井県庁職員組合本庁支部「労金職場推進委員会」

 

 この講演は、さる2月6日、労働金庫が職員研修のため龍谷大学教授石川両一氏を呼び企画したものの一部です。今、労働金庫では、こうした様々な外部講師による積極的な提案を受入れ、単なる「金融や」からの脱皮・体質改善をすすめ、組合員のみなさんのための金融機関となるべく自己努力を続けています。

 

T.労金の独自性・専門性の発揮

 労働金庫というのは自主福祉事業体といわれています。80年代以降、世界的にこうした自主福祉事業体が見直されつつあります。労金は金融の自由化、リテール、メインバンク化をめぐる厳しい競争の中で非常に大変な時代を迎えており、単金(県ごとの労金)の経営格差も大きくなっています。金融の自由化の中で如何に生き残るかですが、そのために様々な事をやらなければならない。経営の効率化は当然やって頂きたい。経費率の高さをはじめ不効率な事は沢山あります。融資の審査は各支店毎にやっていますが、本店で集中してしまえばよいわけです。事務の手続きも複雑です。今ある労金の商品もバラバラではなく、生活ニーズ的確に対応する商品を提供し、それが、生涯にわたって体系的なものになっていく、労金と一生付きあえば大丈夫だという商品を開発して頂きたい。

 利便性の問題があります。支店、CD、ATMの設置は重要な問題です。労金の支店がどこにあるのか多くの人は知りません。「おとうちゃんの付きあい預金」ですから、預けっぱなしです。“天引き”されているということで気にしないわけです。ところが、メインバンクというのは違います。月々5千円、1万円の金を預ける金融機関なら支店が何処にあろうが、担当が誰であろうがいい。ところが、稼いだ金をほとんどそこへ預ける、給与の口座振込をそこへする、メインバンクとして労金を考えるとなると、どこに支店があるか、どこへ行ったら引き落とせるかを考えるのは当然です。

 接客態度の改善も考えてほしい。金融機関への利用者の要望の第1は金利です。第2は利便性です。第3が接客態度です。窓口で自分の立場にたって相談に乗ってくれるかを含めて重要です。

@労金会員の自発性・参加、人と人のネットワークを生かせ

 しかし、これだけでは、他の金融機関と同じ土俵の上でやっているわけで、心許ないわけです。店舗は全国に700ありますが、都市銀行や信用金庫など全国に沢山あるわけですからなかなか勝てません。その為には労金の独自性と専門性の発揮が必要です。労金の独自性とは、会員組織があり、その会員が自発的に活動に参加する事です。そこにおける人と人との繋がり、ネットワークというものが労金の独自性です。1992年末で預金残高は8兆円を超えました。会員組織の役員、書記、職場の推進委員といった5万人をこえる人々が労金活動を支えています。パートタイマー的に活動しているわけですが、それは無償です。何のコストも掛からないわけです。こんな金融機関はどこにもありません。労金の最大の強みはここにあります。ところがこの強みが充分に発揮されていません。労金の外側にいるこれらの人々が生き生きとして活動できるようにする事が労金の最大の課題といえます。

A生活と福祉の金融支援機関として実感できる事業戦略を

 労金の専門性とは働く人々の生活と福祉に対する金融支援を行うということです。それを実感できる企業戦略を企画実践していくことです。かって、銀行は、労働者に対する生活支援、個人融資は相手にしませんでした。その当時の労働者の実感は「労金があるお陰で金を借りられるんだ」ということでした。ところが、今はすべての銀行がそうした人達に対しても融資をしてくれます。それだけでは、労金の存在意義は薄いわけです。労金は定期性預金の比率が高く、流動性預金の比率は低い、また、民間の金融機関のように当座預金のような預金はない。目玉的に有利な金融商品を作れても、全体的に見れば民間金融機関とほぼ同列の金利商品で行かざるを得ない。金利面ではなく、非金利面で労金の存在価値を作ってもらいたいものです。労金に預金を預けたら何が違うかです。

B預金した市民の金が市民にとって有効に運用される戦略を

 所有権と運用権ですが、自分の預金がどう有効に運用されているかということで差をつけられるかです。マイホームを建てたいと言う事で住友銀行にこつこつ預金していく。預けた金がノンバンクを通じて地上げ資金に回る。自分の夢を潰しているようなシステムがあることを市民は良く知っているわけです。ところが、僅かな金利ながらも銀行に預けざるを得ない。それを、住友銀行ではなく労金に預けたらあなたの夢は実現されます。あなたの金は役にったって運用されますよということになれば労金にということになります。

 「付き合い預金」、「預けっぱなし預金」という現在の労金の性格から、総合的な生活コンサルタント、自主福祉の金融センターとして脱皮してほしいわけです。金のやり取りだけでは解決できない諸課題についても応えられるものにすることです。

 全労済は「こくみん共済」や「年金共済」などで、この低成長期を乗り切ってきました。しかし、保険市場が飽和状態の今、金銭給付だけでは限界です。そこで、総合福祉産業に脱皮しようとしています。介護付きの保険を作った場合、単にお金の給付をするというのではなく、いい介護人を、いいホームヘルパーを全労済が派遣しようというものです。これは、日本生命も住友生命でも始めています。金を貰っても、金だけでは解決できない諸課題に直接応えていこうということです。

 理屈の上で労働者が作った金融機関だ、だから労働者が金を預けるのは当たり前だということをいくら繰り返しても始まりません。預貸率が低いからマイプランをお願いしますといってもそれは労金の都合です。自分たちに役にたつからということでなけれ人々は動きません。

 男というものは財政危機だとか不況だとか天下国家の話は真剣にしますが、「自分がもし倒れたらどうするか」などということはほとんど考えない。そうなったら、「妻が面倒を見てくれるだろう」ぐらいです。ところが奥さんたちはすごく真剣です。夫あるいは自分の親や夫の親などが寝たき利状態になった場合は、すべての負担が奥さんに掛かってきますから家庭崩壊です。そうした、女性の生活不安に労金はどう応えていくか。主婦たちが自分たちで安心して暮らしていくための生活クラブ生協といった福祉サービスに乗り出しているのですから、出来る範囲で関わっていく。そうした中で、労金は主婦の見方だ他の金融機関とは違うんだということを実感させることがポイントです。

 

U.総合的な生活情報の提供と生活相談機能の確立

@店舗に人が集まる仕掛けを

 必要な情報の受発信基地としての機能をもってほしい。情報は溢れていますが、自分に取って必要な情報が何かが分らなくなっています。「月間ろうきん」という労金の情報誌に人々が暮らしていくことに役に立つ情報が載っているでしょうか。情報の受発信基地になろうと思うならば、人々の集まるところに情報が集まります。だから、人々の集まる仕掛けを作らねばなりません。

 店舗の地域への開放です。ロービーとか会議室を地元の人にイベントに開放する事です。労金に用事がなければ労金に来ない、労金の支店に行くのは組合の書記や役員ばかりだというのでは困るわけです。日曜日も会議室を貸せばよいわけです。信用金庫などは地元の老人会の会合によく貨しています。その代わり会合が終わればその信金で年金を下ろすということです。あるいは、居住地型店舗の開設です。労金はこれまで、会社の事務所、組合の事務所が集まっているところに支店を作ってきましたが、これからは、人々が暮らしている場所に店舗を作って行く事になろうと思います。しかし、労金単独で店舗を作ろうとすれば資金コストはものすごく掛かります。立地条件の良いところは駅前などですからとても出来ません。そこで、生協の店舗とドッキングする。生協の店舗資金を融資すると同時に作られた生協店舗の片隅に労金の窓口やATMを置く。そうすれば、労金に用事がなくても毎日毎日買物に来る。ついでにお金を下ろしたり、振込をする。全労済も組合の地域事務所も含め、共同の事務所、共同の店舗を作り、集会室や飲みやなども作り、そこへ行けば友達が居る、困った時に相談に乗ってくれるという地域のコミュニティーを作る。そうすれば投資額も安くて済むわけです。

A単なる集金人からの脱皮を

 ルーチン的な集配業務はもっと簡素化する。会員事務の簡素化をする。会員との役割分担をする。たとえば、熱心な活動をしている会員は法人代理店として位置付け、支店と直接取り引きをする。では、労金の専従職員は何をするかです。今でも、労金は労働組合におんぶにだっこといわれています。その代わり、新規開拓をする、個人相談にのるわけです。

 あるいは、新潟労金がやっている「ふれあいアシスタント制度」というのがあります。ママさんバレーで知合ったパートタイマーの女性達に集配をしてもらうということで、59人のアシスタントが時間給850円から1030円で働いています。そのかわり、専従職員は個人相談などをきしっとやる。融資はプライバシーの問題とか個人の事情によってなかなか難しい、それに対応した形でやっていかなければ融資はなかなか伸びない。大阪労金では「レインボークラブ」というのがあります。労金に120万円以上預金した間接構成員は組合員機関を通さずに取り引きする。なぜ、120万円かと言うと、根拠はないわけですが、労金の個人預金の平均は60万円で、平均の倍以上預金している人ですから、生活も計画的にしていると思われるので、組合機関の推薦を受けず融資をしてもいいだろうということです。マイプランなどで、限度額300万円とよくいいますが、勘弁してほしいものです。30万円、50万円、100万円というのならわかりますが、300万円も借りる人はそれを延滞する時は労金だけから借りている訳ではないのです。労金から直接借りることは、労金の預貸率を上げる意味からは良いことかも知れませんが、組合役員の組合員への生活指導面から見ると問題がある。しかし、120万円以上預金している人はそういった指導はいらないだろうということです。預金も、融資も若干有利な金利を出しています。『レインボークラブ』という情報雑誌も発行し、優待割引などもセットします。これまでは、労金から組合そして組合員という一方通行だったものを、三角形の形にしていくというコンセプトです。

B組合役員に有用な情報の提供

 組合役員への情報提供も必要です。青年部が活動できていない。スキーやボーリング大会をやってもなかなか人が集まらない。あなたのところは若い男ばかりだからだめなのだ、どこどこの組合は若い女性が沢山いるから一緒になって何かやったらどうかといったように、組合役員が悩んでいることをアドバイスできる。個人個人の情報を他の人にも共有化していく。

 青森労金がやっている『KINTAクラブ』は、都会では男女の集団見合いというのがはやっていますが、労金が異性との交流の場を設けたらということで始められたものです。最初は労金が企画してネルトンクラブみたいにやる必要が有りますが、2、3年後には各組合の青年部などが自発的にやるようになるものです。そうした中で、労金と関わると面白い、何か役に立つというようになってもらいたい。

 さらに、専従職員はFP、SPといった資格を取って生活設計や資産運用の相談に乗ってほしいものです。ところで、労金の職員はFPなどの資格を優秀な成績で取っていますが、それが現場で活かされているかというと別です。月1回でいいですから会員組合に行って、そうした資格を活かして生活設計や資産運用などの相談に乗ることがメインバンク化に、退職してからの付き合いにも繋がっていくのではないか。

 さらに、労金の外にはそれぞれの分野で特技を持った人がいるはずです。事業融資ををしようとする場合、経営審査能力が無いと手が出せないという場合もあります。それが今、労金の内部に無くてもよいのです。地元には経営コンサルタントとかがいます、その人達と一緒にやっていって、ノウハウを蓄積していけばよいわけです。

 

V.豊富な資金を活用した「目に見える福祉事業」への融資・運営

@和歌山労金紀の国医療生協の例

 8兆円の預金残高がるのですから、目に見える福祉事業に融資するなり、直接運用して頂きたい。単なる金のやりくりや、個人融資ではなく、自主福祉事業を展開してゆく、あるいはそれに融資していくことによって人々の生涯に係われるような労金にして頂きたい。和歌山労金では紀の国医療生協今福診療所を作るのに3億4千万円を融資しました。この診療所は外来患者を診ているだけではありません。患者をじっくり診察し、必要以上の薬は絶対に出さない。さらに往診をやる、訪問看護もやる、デイ・サービスでリハビリなどもやるという地域の医療・福祉の核になりつつあります。労金に金を預ければ私たちが安心して暮らしていけるのに金を使ってくれる、さらに他の銀行と同じだけの金利も付けてくれるとなればということです。

A和歌山労金新宮支店の温泉掘り

 和歌山労金新宮支店では温泉を掘りました。昔は旧国労組合員1200人の40億円の預金を抱えていた支店でしたが、国鉄民営分割化により預金を関西労金の方へ移され、支店としてはガタガタになっていました。もう組合におんぶにだっこは止めよう、地域に根差した労金に変ろうということで、店舗の地域開放をはじめさまざまな取り組みをしてきました。そうした実績で温泉を掘り、新宮市、市民、労金、労福協が一体となり、健康保養センター、リハビリセンターを作ろうということになっています。

B生活科学研究所・ウーマンズハウス建設への融資

 ウーマンズハウスというケア付きの老人マンションをやっているところもあり、東京や名古屋、大阪で十数箇所出来ています。一人暮らしをしていて仲間が欲しいという人達が集まって、共同でコーポラティブ住宅を作る。自分のプライベートな空間はもちろんあるわけですが、共通スペースである、イベントの部屋や共同で食事が出来る食堂がある。地元の老人や障害者もそこで気軽に食事が出来るようにしてある。地域に開かれた老人ケア住宅というもので、生活科学研究所などがやっていますが、こうしたものにも融資をしていく。生活科学研究所の高橋社長の話では、今都市銀行から融資を受け30億とか40億とかを信託方式でやっているわけですが、都市銀行はバックキープを要求して困っているといっていました。現在東京労金との話し合いが進んでいます。

C中小企業勤労者の福利厚生事業への融資

 労金に金が集まってくると、個人融資だけで預貸率を70〜80にも持っていけるはずはありません。事業融資の展開は必要です。中小企業の福利厚生事業への融資があります。これは行政との協調融資を1つの方法にすることも可能でしょう。中小企業の経営者に呼びかけ、自治体の協調融資と企業自身も1〜2%の利子補給をすれば、4〜5%で従業員の住宅融資が組めることになります。共同の社宅、共同保育所も考えられます。

D勤労者福祉基金の活用

 勤労者福祉基金の有効な活用も考えて頂きたい。全都道府県で95億円の基金がありますが、うち13億円が静岡県です。これが、なかなか有効に使われていません。宮城の労福協では5、6億円貯めた段階で特別養護老人ホーム、デーサービスセンターを建設し運営しています。

E日本運送「真友荘」建設への融資

 労働組合は金が無いとはいいながら、蓄えはあります。全国の労働組合では15兆円はあります。だから、労働組合自身も事業展開を考えています。そうしたものに労金はどういう企画を持っていけるかです。フットワーク和歌山分会という小さな組合ですが、組合員が元気で働いている時だけの組合ではなく、生涯付き合える組合として定年退職してしてからもつきあえるようにと小学校の廃校の跡地を借り宿泊施設を作りました。1億7、8千万円かけています。各組合員が100万円出資をするということで、労金の一斉積立てを利用しました。足りない分にについては労金からの融資でやるということです。

Fシャープ労働組合のあいあいランド

 また、シャープの労働組合は生駒山にリゾートホテルを作っています。四条畷市が10万坪の土地を確保し、グラウンドやテニスコートやワンパク広場を作り、宿泊施設については直接経営はしたくないので民間資本を導入するということでシャープ労働組合が一流のリゾートホテルを作ったわけです。温泉プールなどもあり、稼働率は90%を超えているということです。これはシャープの組合だけが利用できるのではなく、四条畷市民も割引券で利用できるというものです。価格は8千円から9千円です。複合的施設の中にそういうものを作れば非常に魅力的なものになります。自分たち単独では泊るだけの施設になってしまいます。

 

W.個人還元より社会的集団的還元の重視

@先取りする企業・1%クラブ

 個人還元よりも社会的集団的還元を重視してほしいものです。企業の社会的貢献というものを主張していますが、経団連は社会貢献推進委員会をを作りましたし、主要247社でワンパーセントクラブというのを作り、最低経常利益の1%を社会貢献に回そうというものです。企業が先取りをしている。

A協同の成果としての余剰金を社会的集団的還元に使う

 協同の力で生みだした余剰金を個々の組織や個々の個人にバラ撒くのではなく、一部でいいからプールして、集団的に役に立つ事に使っていく。全労済は毎年300〜400億円を還元金としてばら撒いていますがもったいない話です。協同の力ではじめて生まれた果実です。それを又個人にばら撒くのでは駄目だと思います。個人では出来ない有利な共済制度を作るということで個人への還元は終わっているのではないでしょうか。剰余については社会的還元に使っていくということが必要なのではないでしょうか。1割でもいい2割でもいい、工夫してやっていくべきです。毎年70億円を社会に役に立つ事に使っていけたらすごい大きな力になります。

B社会目的預金を提起しよう

 労金の社会目的預金というものを提起してはどうか。預金の金利の20%をプールしてある社会的目的の為に使う。郵便局がやっている「国際ボランティア預金」がその代表的なものです。加入者は1千万人を超えました。ボランティア預金残高は1兆数千億円になりました。普通預金の金利の僅か20%ですから0.05〜6%という数字ですが、一昨年で34億円、今年は50億円を超える数字になるでしょう。それで、民間版のODAということで、医療とか様々な援助を発展途上国へ行っている。そういう具体的な、ささやかな金(1人当たり500円とか)ですが、発展途上国の医療や教育に具体的に使われる。金利選好は強いのですが、一方意義のあるものならば、「少しはお金をだしてもいいよ、この程度なら私にも出来る」ということです。

 静岡労金では「福祉目的預金」を会員に提起し議論しています。神奈川労金では「みどりの預金」ということでやっています。東京労金も生活クラブ生協と提携し、「環境預金」を提起しやっています。出来る範囲でよいから、社会に役に立つことをやっていく時代に入りました。

 

X.自治体との積極的な提携・協力関係を

 自治体との提携を考えて頂きたい。自治体は労金の様な非営利団体とは提携しやすい。株式会社ならば便益供与になります。労金も大切なお金を預っていますから、採算のとれないことは直接は出来ません。しかし、それを支援する事は出来ます。公的資金を労金に低利で預けてもらい、それに2%の利鞘を上乗せして福祉団体に融資する、あるいは協調融資をするという手もある。福祉団体に融資する時に自治体が利子補給するということもできるでしょう。

 

Y.地域に埋もれている福祉資源を発掘し有効に活用しよう

 地域には様々な埋もれた福祉施設があります、小中学校は子供たちが減っています。そこには、給食施設、土地、集会施設があります。歩いていける距離にデイサービス供給施設があることになります。学校は文部省の管轄で、老人福祉施設は厚生省の管轄だということで様々な問題があります。これを運動の中で取っ払うということを東京などではやっています。また、民間の保育園に働きかけ、東京の板橋区の竜の子学園では小さな子供たちが老人と触れあう機会が無いということで、食事を園児たちと一緒に配達しよう、そしてそこでお年寄りと話をすることによって、地元の老人たちはすごく喜んだわけです。保育所や幼稚園には保母がいる保健婦や栄養士がいる、給食施設はある、遊戯室があるからそこでリハビリとか色々な事が出来るわけです。

 ところが、建物が単一の目的でしか作られていない。労働会館とか青少年会館とか婦人会館とか、縦割り行政の元で単一目的で作られている。複合的多目的な施設に変えてしまえば、地域には沢山の福祉資源を持っている。それをリニューアルするのに資金がいるのであれば労金がいろんな形で関わっていくことができる。

 

おわりに

 労金はメインバンクでなければなりません。預貸率がどうのということで、そんなことをやっている暇がないと仰るかも知れませんが、労金は夢と算盤が両立できる唯一の金融機関です。数字ばかり追っていて、労金自身の都合で預貸率を上げるためのキャンペーンばかりやっていたのでは、労金の最大の財産である会員は生き生きとした活動はしません。なぜ、労金の職員の為にだけ一生懸命やらなければならないかと思うからです。推進機構で会議に集まれといっても、またかということになります。職員は会議に参加するのに残業手当ということになるでしょうが、推進委員の人達はタダで来ているわけです。推進委員にとって労金を発展させる事が自分たちにプラスになることを作らないとだめだ。その為には夢とロマンがなければだめだ。夢とロマンを語って実現する事が労金の経営体としての発展と安定に繋がるわけです。

 労金だけで考えるのではなく、あるいは、組合会員だけで考えるのではなく、様々な特技を持った人達と積極的に出会って、その人達のネットワークの中で、様々な工夫やアイデアを出していくことです。

 

・・・・・・講師プロフィール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 いしかわ・りょういち

  1977年、大阪市立大学経済学部博士課程卒、現在龍谷大学経済学部教授。大阪市政調査会理事。労働金庫研修所「富士センター」講師。著書に『労働者世界を求めて』共著(日本評論社)『現代労働問題への諸断面』共著(大阪市立大学経済研究所所報)などがある。

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