第7条

第1号(個人情報)関係

 一 個人に関する情報事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)で

  あって、特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合するこ

  とにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)

  または特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、な

  お個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情報を

  除く。

  イ 法令もしくは他の条例の規定によりまたは慣行として公にされ、また

   は公にすることが予定されている情報

  ロ 人の生命、健康、生活または財産を保護するため、公にすることが必

   要であると認められる情報

  ハ 当該個人が公務員(国家公務員法(昭和22年法律第120号)第2

   条第1項に規定する国家公務員および地方公務員法(昭和25年法律第

   261号)第2条に規定する地方公務員をいう。)である場合において、

   当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、

   当該公務員の職および氏名ならびに当該職務遂行の内容に係る部分

   (当該公務員の職および氏名に係る情報にあっては、公にすることによ

   り当該公務員の権利利益を不当に害するおそれがある場合の当該情報を

   除く。)

 

【趣旨】

1 本号は、個人のフライパシーその他の正当な権利利益を保護する趣旨で設けられたも

 のである。

2 プライバシーの具体的内容および範囲は、法的にも社会通念上も必ずしも明確でなく、

 個人の価値観により見解が分かれることが少なくない。このため、本号では、個人の尊

 厳および基本的人権の尊重の立場から、個人のフライバシーが最大限に保護されるよう、

 個人に関する情報で持定の個人を識別することができるものは、プライバシーに該当す

 るか否かの判断を行わずに原則として公開しないこととした。その上で、個人の権利利

 益を侵害せず非公開とする必要のないものや個人の権利利益を侵害しても公開すること

 の公益が優越するため公開すべきものを、本号ただし書で例外的に非公開情報から除く

 こととした。

 

 

【解説】

1 「個人に関する情報とは、個人の人格や私生活に関する情報に限らず、個人の知的

 創作物に関する情報、組織体の構成員としての個人の活動に関する情報、その他個人と

 の関連性を有するすべての情報を意味する。具体的には、思想、宗教、身体的特徴、健

 康状態、家族構成、職業、学歴、住所、財産の状況、所得その他一切の個人に関する情

 報をいう。

  1. 個人に関する情報であっても、「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、本条第

 2号で判断することとしたので、本号の個人に関する情報の範囲がら除外するものであ

 る。ただし、事業を営む個人に関する情報であっても、当該事業とは直接関係のない情

 報(家族構成等)は、本号に含まれる。

3 「特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の

 個人を識別することができることとなるものを含む。)」とは、氏名、住所、生年月日等

 の記載から直接的に特定の個人を識別することができる情報のほか、その情報自体から

 は特定の個人を識別することはできないが、当該情報と他の情報とを照合することによ

 り、間接的に特定の個人を識別するこどができることとなる情報をいう。

4 個人の氏名等が記録されている公文書であっても、氏名等を削除することにより、公

 にしても個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるときは、本号に該当しな

 いものとして氏名等を除いた部分を公開しなければならない(第8条第2項)。

5 「特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利

 益を害するおそれがあるもの」とは、末公表の著作物など、個人識別性のある部分を除

 いたとしても、公にすることにより、財産権その他の個人の正当な利益を害するおそれ

 のある情報のほか、カルテ、反省文などの個人の人格権と密接に関わり、その流通の範

 囲を当該個人がコントロールすベき情報をいう。

6 ただし書イについて

(1)「公にされ………ている情報」とは、現在、何人も知りうる状態に置がれている情報

 をいう。法令の規定により公にされている情報としては、商業登記簿に登記されている

 法人の役員名等があり、慣行として公にされている情報には、受彰書名簿、審議会の

 委員名簿等がある。

(2)「公にすることが予定されている情報」には、公にされることが時間的に予定されて

 いるもののみならず、当該情報の性質上通例公にされるものも含まれる。

7 ただし書ロについて

(1)「人の生命、健康、生活または財産を保護するため」とは、「人の生命、健康、生活

 または財産」に現実に被害が発生している場合に限られず、これらの法益が侵害され

 るおそれがある場合を含む。

(2)「公にすることが必要であると認められる」かどうがの判断は、非公開により保護さ

 れる第三者の利益と公開により保護される利益(人の生命、健康、生活または財産の

 保護)の双方について、それぞれの利益の具体的性格を慎重に検討した上で比較衡

 することによって行う。

(3)ただし書ロに該当すると認められる第三者に関する情報が記録された公文書を公開

 しようとする場合には、当該第三者の権利利益を保護するための手続をとらなければ

 ならない(第14条第2項、第3項)。

8 ただし書ハについて

(1)「公務員」とは、国家公務員法第2条第1項および地方公務員法第2条に規定される

 すべての公務員をいい、−般職・特別職または常勤・非常勤を問わない。したがって、

 国会議員、地方議会議員および附属機関の委員もこれに含まれるが、懇話会の委員等

 公務員としての地位を有しない者は含まれない。

(2)「職務の遂行に係る情報」とは、公務員がその地位に基づいて所掌する事務を遂行し

 たことにより記録される情報をいう。したがって、職員としての身分取扱いや給与等

 の情報は、当該公務員にとっては、職務の遂行に係る情報には当たらないものである。

(3)「公にすることにより当該公務員の権利利益を不当に害するおそれがある場合」とは、

 当該公務員が担当する職務内容等により、その職および氏名を公にすると、当該公務

 員の私生活が公務員として受忍すべき限度を超えて脅がされるおそれがある場合等を

 いう。

9 情報公開制度は何人にも公開する制度であり、本号においても公開請求書がだれであ

 るかによる区別を設けていない。したがって、特定の個人に関する情報が記録されてい

 る公文書について本人から公開請求があっても、本人以外の者からの請求と同様、公開

 することはできない。

  なお、このことは、この条例の規定による公開ができないということにすぎず、当該

 本人に対する適切な情報の提供までを禁止しているものでない。