Masonic Templarの謎 ─── メソニック・テンプラーとは・・・


Mesonic Templarの謎 
(警告、今回は面白くありません、でもこの話題は避けては通れない?)

この辺でリック・オコンネルの秘められた正体について考えてみなければならないと思います。

この話題はもっと早くに取り上げるべきものでしたが、相補的役割をきちんと果たしてきた映画ととノベライゼーションに、ただ一点、大きな相違があるとしたらそれはこの点なので、なかなか見解をまとめる事ができませんでした。

ノベライゼーションは、大抵映画の製作と平行して書かれるので、脚本の決定稿を参照して書かれると考えていいでしょう。
しかし映画を撮る時に付け加えられたり編集段階で削除されたりする部分については、よほど大きな変更でない限り、大抵そのままにされるようです。
よってどちらを底本とするかと言えば、もちろん映画そのものであることは言うまでもありません。


さて、表題の"メソニック・テンプラー"なるもの、リックの前世に関わる非常に重要な事項であるにもかかわらず、ノベライゼーションも映画本体もはっきりとした説明をしていないのが現状です。
しかも、ノベライゼーションでは用語がつぎつぎと微妙に変わり、首尾一貫していません。
一方映画ではノベライゼーションの用語を一切用いず(私が聞き取った中では一切使われていませんでした)、全て"メジャイ"という言葉に置き換えてあります

多分脚本を作成する時点と撮影時までに修正と変更が何度かなされたにちがいいありません。
私としてはノベライゼーションの設定より映画の方が単純で統一されていると思っていますが、いかがでしょうか。


やや細かい引用が増えますので、お時間とご興味のある方、どうかお付き合い下さい。

出口無し! ここのテキストとはあまり関係ないね!











まず復習です。リックの刺青について言及されているが3カ所、まずテーベの神殿地下でアレックスがリックの後を追いかけてきて鉢合わせする冒頭の部分で、アレックスが

"I saw your tattoo!"
(────「お父さんの刺青を見たんだ」)

ここで、ハムナプトラ1では全く言及されなかったリックの刺青がクローズアップされます。
ところが映画と本では微妙にパターンが違います。

映画では「二人の王、ピラミッド、眼」が上げられています。
将棋倒しの最後の柱が倒れる壁にほんの少し見えたのもそのパターンでした。
ノベライゼーションではアレックスは「下を指す羅針盤、上を指す鷹の翼、それがピラミッド型を作り、その中にホルスの眼」があるとしています。(このパターンを覚えて置いてください)


二度目に触れるのが、リックとアーデス・ベイが大英博物館に乗り込もうと武器を選んでいるときにアーデス・ベイがリックの腕に眼を止めて「聖なる印がある..」と言ったくだりです
「お前と相棒」に一度書きましたのでそこを引用します。


...when Ardeth Bay suddenly, dramatically, clutched him by the wrist, as if O'Connell were the one wearing the Braqcelet of Anubis.
"What?" O'Connell said, crossly.
"You are marked!" Ardeth Bay was staring at the pyramid-shaped tattoo with the eye of Horus, which O'Connell had carried since childhood.


────突然アーデス・ベイは劇的な身振りで、まるでリックがアヌビスの腕輪をしているかのように彼の手首をつかんだ。
「何だ?」
「印がある!」アーデス・ベイはホルスの目のついたピラミッド型の刺青を凝視した。それはリックが子供の頃から入れられていたものだった。


Respectfully, even reverently, and with a spooky intensity, the warrior said,
"Were I to say you, my friend, 'I am a stranger traveling from the east, seeking that which is lost... ' "
Without thinking, in a somewhat robotic fashion, O'Connell said ----and heard himself saying, as if from a distance,
"I would reply, 'I am a stranger traveling from the west. It is I whom you seek'"


────敬意をこめて、ほとんど恭しい様子で、奇妙な熱意を込めてメジャイの戦士は言った。
「友よ、もし私が '私は東から来た旅人だ、なくしたものを捜している’と尋ねたら・・・」
何も考えずに反射的にオコンネルは言った。自分が話しているのを、遠いところから聞こえてくる他人の声のように聞いていた。
「こう答えるさ、’私は西から来た旅人だ、あなたが捜しているのはこの私だ’」


"How do you know this?"
O'Connell was slinging on the guns. "I don't know. It's some saying I've known since I was a kid. Long as I can remember."
Before he could remember...


────「どこでそれを知った?」  
オコンネルは銃を吊しながら答えた。
「分からない、小さい時分から知っていたことわざだ。思い出せる限りで一番昔だ」
いや、彼が思い出せない昔からだ・・・アーデス・ベイは思った。
  

Ardeth Bay bowed his head. "Then it is true...You are a Knight Templar."
O'Connell blinked. "What am I?"
"You bear he Masonic mark."
"This thing?" He held up his hand. "This got slapped on me back inthe orphanage, in Hong Kong."

────アーデス・ベイは頭を下げた。
「では、言い伝えは本当だった・・・君は神の戦士(*)だ」
オコンネルは目をぱちくりさせた、
「僕が何だって?」 
「君は秘密の印章(*)を身につけている」
「これのことか?」 手を上げながら言った。 「ずっと昔ホンコンで孤児だったときにいれられたんだ」


Ardeth Bay pointed at the tatoo.
"That sacred mark means that you are a protector of man... a warrior of God..."
Lightning flashed again, as if God agreed with this assessment.
But O'Connnell didn't. He merely smirked, said,
"Buddy, you got the wrong guy."....


────アーデス・ベイはその刺青を指さした。
「その聖なる印は君が人類の守護者だと言う意味だ...神の戦士なのだ」
再び稲妻が閃いた、まるで神がその推測に頷いているようだった。
しかし、オコンネルはその考えは気に入らなかった、彼はただ苦笑しただけだった。
「悪いが人違いだ」...



三度目に話題になるのが飛行船の中、

"Your sister's husband," Ardeth Bay was saying, "is reluctant to embrace his destiny."
...Ardeth bay ---his falcon perched contentedly on his left forearm---nodded. "And yet O'Connell flies like Horus toward his destiny."


────「君の妹さんの旦那は、」アーデス・ベイが話している。
「どうも素直に自分の運命を受け入れられないらしい」
(中略)...すっかり満足しきっている鷹を左の腕に乗せて、アーデス・ベイはうなずいた。
「それにもかかわらず、オコンネルは自分の運命にホラスのようにまっしぐらに飛んでいくのだ」


場面が飛びますが、先回書いたイヴリンの回想シーンの直前にも...


Now, as she helped her brother Jonathan pack gear in preparation for setting out on foot, she had a strange, tingling sense. Voices were calling to her---voices from the past, though not necessarily her past.


────ジョナサンが徒歩の旅に備えて必要な物を荷造りするのを手伝いながら、イヴリンは奇妙なちくちくする感覚を覚えていた。声が呼びかけてくる──過去からの呼び声、それも自分のものではない過去。


Nearbay, the Med-jai chieftain and her husband were cleaning and loading weapons, making ready for the inevitable battle ahead.


────傍らではメジャイの長と彼女の夫が前途に待っている避けられない戦いのために、銃の掃除をして弾を込めている。


"If a man does not embrace his past," Ardeth Bay was saying to Rick,
"he is unprepared for his future."
"Okay," Rick said, with a sigh, "let's say I am some reincarnated Masonic Templar..."
"That is not precisely what---"
"Whatever the case. So I'm a Templar Knight--- so what? What good does that do us right here and right now?"

"It is a spiritual thing. It is the missing part of you---of your heart, your soul. If you addept it, if you hold it near to your heart, you can do anything--- including triumph against the approaching adversity."


────「もし自分の過去を受け入れられないとしたら、」アーデス・ベイがリックに向かって話している。「その男は自分の未来を受け止める準備ができていないことになる」
「わかったよ」一つ溜息をつきながらリックは言った。
「それじゃ言わせて貰うが、ぼくがメイソン・テンプラー(*)の何らかの生まれ変わりだとして...」
「それはこの場合正確なものじゃ・・・」
「どうであろうとだ。それで僕はテンプル騎士団(*)の一員で・・・それがどうだというんだ? それが今ここでぼくらになんの役に立つと言うんだ?」

「これは精神的な事なのだ、君の、いや君の心、君の魂の失われた部分なのだ。もしそれを受け入れて心から信じれば、君にはおそれる事は何もない。迫りくる敵に勝つことも含めてだ」


ここで"Knight Templar" "Masonic mark" "Masonic Templar" という3つの判じ物のような言葉が繰り返し現れます。
実際にある言葉は"knight Templar"がテンプル騎士団、"Masonic"がフリー・メーソンの形容詞「メーソンの」を表します。
ただし「メイソン騎士団」というのは歴史上実在の物ではありません。


the Mummy Returns; Scrapbook という子供向け写真集に簡単な説明があるのでそれを参考にしましょう。
題は"the Masons and the Knights Templar"


メーソンテンプル騎士団という物は実在しない、しかしメーソンとテンプル騎士は歴史上の事実である。テンプル騎士団は(The Order of the Knights Templar)は聖地エルサレムへの巡礼の旅にあるヨーロッパ人を守る事を誓った9人の騎士によって西暦1118年頃に成立した。
時が経つに連れてテンプル騎士団の騎士たちは(これがKnight Templar)莫大な富を蓄え、ヨーロッパの諸侯たちは彼らの勢力に脅威を感じ、彼らの信仰の実践に疑問を持つようになった。遂に西暦1312年に異端とされ、蓄積した富は西欧諸国の貪欲な王たちに略奪されることとなった。
フリーメーソン、または単にメ-ソンもまた、中世の秘密結社である。しかし彼らの組織は専ら石工、建築業者などを保護するギルド(職工組合)として成立した。


このように述べられています。テンプル騎士団と言えばインディアナ・ジョーンズ「最後の聖戦」でグラール杯を守っている騎士がその一員でしたね。推測ですがどうも欧米の文化の中では一般に、知られていない秘儀を守る幻想的な秘密集団と言う色合いが強いみたいです(本来の歴史上の事実とは離れて)日本で言えば竹内宿禰とか役小角とか・・・
おっと話題がはずれました、元に戻って先を急ぎましょう


ところが映画では全くこれには触れられていません。アーデス・ベイがリックの刺青を見て「君はメジャイだ」と言う台詞があるのみ。
ここで"メジャイ"と言っているのは、リックがアーデスたちの一族だという意味ではなく、甦る邪悪から人類を救うべく運命づけられた戦士という意味でいっていると思われます。


神殿の戦士?/メイソン・テンプラー?
もう一つ面白い相違があります
最後にピラミッドの壁画でオシリスの槍のHow toが描かれているのを見つけ、リックが「信じるよ」というくだりです。


He slammed up against a cave wall that, fortunately, was smooth and didn't impale him on any sharp rocks, merely jolted every bone and muscle in his body. Getting painfully to his feet, he found himself next to a life-size cartouche depicting not an Egyptian figure, but a medieval knight. In the process of cathing his wind, and pulling himself together, O'Connell noticed the image depicted the knight holding not a sword or a lance but a scepter... the golden Scepter of Osiris!


────オコンネルは洞窟の壁に嫌と言うほど叩きつけられた。幸いにも壁面は滑らかで、全身の骨と筋肉がひどい衝撃を受けたものの、鋭い岩で傷つくようなことはなかった。痛みをこらえながら立ち上がると、傍の壁に等身大の花枠に古代エジプトの人物像ではなく中世の騎士の姿が描かれているのに気がついた。息を整えて気を静めている間に、オコンネルは、この像に描かれている騎士は刀や槍を構えているのではないのに気付いた...手に持っているのはオシリスの王笏ではないか!


And the knight's hand, holding the scepter in the image, bore that same tatoo---the pyramid formed of mariner's compass and falcon's wings, centered with the eye of Horus--- that O'Connell hads worn since childhood!


────そして、王笏を持つ騎士の腕にはリックが子供の頃入れられたのと同じ・・・中心にホルスの眼を擁したピラミッド形を作る羅針儀と鷹の翼・・・その刺青がくっきりと描かれていた。


...The cartouche wall was a damn how-to-do-it display, depicting the knight in a series of images prepareing the Scepter of Osiris for battle, revealing that the golden object telescoped out into a spear...
...and the final image portrayed the knight hurling the spear at a likeness of the Scorpion King!


────その花枠(カルトゥーシュ)の壁画は事もあろうに"見るだけで分かる"手引き書だったのだ。
そこには一人の騎士が戦いに備えてオシリスの王笏を構えている一連の姿が描かれていた。
そして、その絵は黄金の王笏が自在に延びて槍になる事を示していた...
...そして最後の画面は、騎士が槍をスコーピオン・キングのような怪物に向かって投げつけていたのだ!


For many long centuries, the Med-jai had stood watch at Hamanaptra, guarding against Imhotep's return; had Knights Templar during the Holy Crusades learned of the Scorpion King, and kept guard here?


────何世紀にも渡り、メジャイはハムナプトラを監視してイムホテップの再来に警戒してきた。テンプル騎士団の騎士が十字軍遠征の間にスコーピオン・キングについて知り、この地で彼を封じてきたとは考えられないか?


And was O'Connell one of them?
Right now, he was ready to believe---

────そしてオコンネルはその一員だったとは...?
ここに及んでオコンネルは信じる気になった...


以上がノベライゼーションに書かれたリック=聖堂の騎士=テンプル騎士団説ですが、ご存じのように映画ではこれは採用されていません。その代わりに飛行船の中でアーデス・ベイがリックのことを「メジャイ」と呼び、アーム・シェアのピラミッドの中の壁画でもナイト・テンプラーの姿は中世の騎士ではなく古代エジプトの戦士の姿をしています。

この変更は正解だったと思います。ハムナプトラ・ワールドの話はやはり紀元前13世紀(スコーピオン・キングの伝説を加味するとB.C.3000年まで遡りますが)古代エジプトで完結してもらいたいものです。どう考えても黄金のピラミッドに甲冑の騎士ではアナクロニスムの感が否めません。


さらに、少しだけ触れられているフリーメーソンについて、日本では、モーツアルトが会員だった事くらいしか知られておらず、一般の理解も先ほど引用したスクラップブックの簡単な記事にあるように、中世の建築業者のギルドの作った秘密結社、といった実体が掴みにくい代物です。
それだけにリックと古代エジプトとメーソンは全く結びつかない齟齬のある関係に見えるのですが、調べてみるとメーソンの起源は諸説があって中に古代エジプト説、および聖堂(テンプル)騎士団説まであるのを発見しました。


簡単に紹介すると

古代密儀宗教起源説;フリーメーソンは古代世界における密儀宗教を起源とする説。代表的な密儀宗教にオシリス=イシス密儀、ディオニソス密儀...これらは死と再生の主題を共通に持ちメーソンの「ヒラム伝説」と密接な関係を持つ。部外者を隔絶する特徴もメーソンの秘密性に繋がる...

聖堂騎士団起源説;十字軍はイスラム教徒からエルサレムを奪回したが巡礼者の安全までも確保できなかった。青銅器師団は巡礼者の保護を目的として1120年頃に結成されたもの。「ソロモンの神殿」の置かれていた王宮後に本拠を置いたので聖堂(テンプル)騎士団と呼ばれる。1314年指導者の殺害によってスコットランドへ逃れ組織を再編したのがフリーメーソンだとする説。

更にフリーメーソンの重要な象徴が三角形に中に描かれた「万物を見る眼」であり(リックの刺青のパターンを覚えていますか。ピラミッドの中にホルスの眼があります)アメリカのワシントン記念塔がエジプトのオベリスクの形を模しているのも、建設の母体となったモニュメント協会会長、デザイナー共にフリーメーソンであった事、モーツアルトの魔笛がエジプトを舞台としてオシリス=イシス密儀を使用しているなど、フリーメーソンとエジプトが密接な関係を持っていることを示唆しています。


どれも全く無関係ではないようなのですね。それだけにほんの少し言及されるとますます混乱してしまいます。
ソマーズ監督の脚本を元に書かれたノベライゼーションですが、リックの前世に対する変更を修正していないので、読んだときに全くの異質感を感じ、却ってどのようなコンセプトでこういった初期設定にされたのかを是非分かるところまで追究してみたいと思った結果が今回の考察です。

結局なぜテンプル騎士団、メーソンまで持ち出してきたかは分からず終いでしたが、なんとかリックの過去もイヴリン、イムホテップ、アナクスナムンたちと関連を持たせたいという苦肉の策とも思えます。
しかし、さすがに中世の騎士を持ち出す時代錯誤は認めたのか、古代エジプトの戦士ということに話を納めたと言うところではないかと思います。


(2001/08/03(金) 記)