an opinion
絵はここからもらいました。

インド



 インドの核実験は非難ごうごう。インド国民にはある程度の支持は得ているらしいが、まあ、世界が”非核”の方向に歩んでいるさなかの実験は、朝日の和田俊さんも論説で述べていらっしゃるように、「一部の地域では救いがたい貧困が市民を襲っていたり、教育も広くは普及していない国家事情の中で、目の前の困窮する国民を救わずに核実験などに多額の資金を投与するインドの為政者たちはまったく愚かだとしか言いようがない」、ということである。

 その通りではあるのだけど、私は今回のニュースを見て一概には非難できない気持ちだった。いつぞやのCTBT(だったか、日本語訳は忘れた)の国連での採決の時にインドだけが賛成しなかった(もう一つどこかの国も反対だった気もするけど)ことで条約が採択されなかった時に、それだけを聞いた時には、まったく世界が一斉にその方向で非核を推し進めようと一つになりつつあるときに、一国だけのわがままで反対するなんてなんということをしてくれるんだ、っていうような気がしました(いかにも日本人らしい感じ方で!みんなが賛成しているのになんてことを!!って感じ)が、その実詳細な事情が報道されると、大国だけが核をすでに持っている状況の中で、なおかつアメリカとロシアはもう実際に爆発させるような実験を行わなくてもコンピューターシミュレーション実験だけで核開発研究が行える段階に達しているとのこと、そして条約では実際の核実験は禁止するがシミュレーション実験は例外だと言う、こんな状態の中で、たしかに正常な国政担当者ならば、そんな米露だけが有利な条約に賛成はできないと考えてもおかしくない。どころかもっともな話だと思う。

 そのことが大きくひっかかったまま、フランスの実験などもあったけど(中国もだったか?)、そして、インドの実験である。ああ、やっぱりな、としか言いようがない。

 インドは本当に悪いだろうか。本当に非難されるべきはアメリカ、ロシアではないのだろうか。CTBTの時にも議論があったが、本当に実験を禁止したいのならばアメリカ、ロシアが持っている核の実験データを全世界に公開するべきだ。あるいは、シミュレーション実験も全廃にするべきなのだ。こんなザル法、日本の政治腐敗防止法じゃあるまいし、抜け道ばかり用意した法や条約は何の意味もなさない。

 そして次に我々日本人が非難すべきはわが日本じゃないのか。
 フランスが核実験を行ったときには世論も盛り上がってフランス製品非買、などとわき上がりもしたが、熱さも喉元を過ぎればもう忘れ去っているではないか。本当にシラクの政策を非難するなら、彼が在任中は国交を絶つくらいのことをしてみたらどうなんだ。あれから何年経ったか知らないがまだ忘れるには早すぎる。舌の根も乾かないうちになんだったかタイトルは忘れたが、お台場ではフランスまつりだって!!!笑わせんじゃねーよ。だ。
 そして本当に考えるべきは、安保条約によってアメリカの核の傘の下に入っている日本はアメリカと同罪だということだ。いや、同罪でありながら唯一の被爆国などと名乗って善人ぶる態度などは最悪である。ボーダーレスの時代といわれて21世紀(21世紀じゃなくても)は”国境”というものを考え直す時代に来ていると思うが、これからは”安全保障”、とか”経済”、とかのそれぞれの枠組みごとに国境を考えるべきではないだろうか。個々人の”住居管理”などの面では現在の国境が適用されても、”安全保障”では言うまでもなくアメリカと日本は同じ「国」である。ハワイの次の州と言えるか!(少し広く見ればNATOに入っている国なんて全部同じ国と言っても過言ではない。また希望的観測としては”人権”に関する法律などの点では全世界が同一国家として考えてもらえると良いし。)最近取りざたされるように”経済”ではヨーロッパが通貨統合によって一つの「国」になるし、日本はアジア経済圏になるのか、ドルに取り込まれてこれまたアメリカの一部になるのかわからないが、要するにアメリカの一部としてその責任の一端を担うのか(含兵役)、あるいはアメリカの一部として世界警察と自称するアメリカの、あるべき姿をきちんと進言していくのか、または独立した一つの国として(もちろん核の傘の外へ出て非武装中立を全うした暁に)、現在のアメリカ、ロシアの核に対する責任を明確に指摘して、率先して非核を推し進める立場をとるのか、立場を明確にして欲しいものだ。

 インドのことが非難できるのはそのあとだ。

                      ('98.5.19)


 書き忘れてたけど、それに対して私がどういう立場を取るのかというと、インドに対してもパキスタンに対しても、どうか核実験なんてしないで下さい、と、ただお願いするのみです。

                      ('98.5.22)




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