「梅干し」
昔から田舎では、家の周りに梅木は必ずあった。
梅干しは、家庭の常備品でもあった。だから、大切な暮らしの一角として認められていた。
このため、梅木を始末(整枝)し害虫がつかないようにも気を配った。老木になるとチャンと次世代の若木を植えた。
近年、毛虫も増えたし薬剤もだんだん効かないようになってきた。ホッタラカシにしておくといつの間にか衰退し、ついには枯れてしまう。
ただ、近年は孫も殆ど食べなくなった。
昔なら、ご飯を食べるときには必ず食卓に置かれた。そして、必ず一つは食した。一般的に、これが当たり前のような生活であった。
この頃は随分と事情が変わってきた。息子も息子の嫁も、塩分過多とか何とか言って食べないのだから、当然に孫は食べない。
わけはわからないが、塩分に関しては梅干しは“別”でないだろうか?
昔は沢山作ったが、今は3升ほどしか作らない。それでも、毎年作ると前年のが食べきれなくて処分しなければならないこともある。
当時は、弁当には必ず入れたし、オニギリにも入れた。
いまどきは、孫たちは学校給食であり、息子夫婦は外食である。これでは、梅干しの出てくる幕がない。
若い者が遊びに行くという。
車は、昔の乗合バスのように大きい。8人は乗れる。それに、テレビや行き先を教えるテレビもついている。外が暑かろうが寒かろうが、車の中は別世界である。
家にいるのとは、よっぽど心地がイイ。
おじちゃんもおばちゃんも連れて行ってあげるというので、オニギリの用意をしたが、この時代梅干しはなく、中身は塩昆布・塩ます・フリカケが主流となっていた。
足らなかったら、向こうで買えばイイとのことである。お茶も何処にでもあるから・・・
世の中、不景気というが、私の感覚では随分と恵まれていると“お天道様に感謝”している。
“梅干し”作りは大変に面倒である。
わたしは、年中行事となっているので苦にならないが、携帯電話でいつでも緊急事態に備えている年代には、チョッとムリかもしれない。
仙人堂住人 吉田 宇之栄
その行程は、大きく四段階に分けられる。
第一段階 塩漬け
第二段階 しそ漬け
第三段階 漬け込み
第四段階 土用干し、夜露に晒す
材料
梅 2kg
塩 400g(梅の20%)
しそ 200g
しそもみ用の塩 30g(しその15%)
甕(かめ) 漬け込む梅が7分目ぐらいでおさまる
ボウル 梅への塩をまぶす
ザル 洗ったときの水切り
重石 水洗いをしたらよく乾かす
塩漬け(第一段階)
1 梅は、傷をつけないように洗って、水に一晩漬けてアク抜きをする。
熟しているときは、短い時間でもよいので状態によって加減する。
2 アク抜きをしたらザルに上げ水を切る。
ぬれたままの状態でよい。
3 ザルに上げた梅は、水気があるほうが塩が付きやすい。
ボウルで最初に量っておいた塩をよくまぶす。
4 塩をまぶしたあとの残りは、すべて漬け込んだ梅にふりかける。
重石をして2〜3日すると、表面まで汁が上がってくる。
しそ漬け(第二段階)
1 しそを洗う。しそは、茎に付けたままのほうが洗いやすい。
逆さにぶら下げ水気を切る。
水気をきったら葉を一枚ずつむしる。
2 しそは、ボウルに入れて塩をふりかける。しそが柔らかくなるまで強くもむ。
しそもみは、揉みやすいように何回にも分けて揉む。
3 赤黒いアクが出る。これで、しそが柔らかくなる。
4 汁は固くしぼる。汁は全部捨てる。
5 アク抜きしたしそに、梅の塩漬けで出来た液を1カップ(100cc)ほど注ぐ。
6 さらに、しそを液の中で揉むと鮮やかな赤紫の色に染まってくる。
漬け込み(第三段階)
1 赤紫に染まった液を、甕に納めた塩漬け梅にかける。
液が全体にいきわたるように容器をゆする。
2 梅が、全体に染まったことを確かめ、固くしぼったしその葉を広げ、梅を覆うようにのせる。
3 押しぶたで梅が液に浸る程度に重石をのせる。
覆いをしておく。
そして、梅雨明けを待つ。
土用干し、夜露に晒す(第四段階)
1 梅雨明けの快晴をの日を見計らって、梅としそ(硬く絞る)を取り出し、重ならないように広げて干す。
夜は、梅・しそともに漬け液の中に戻す。
同じことを三日間繰り返す。
このあと、7〜10日間そのままにしておく。
晴天の夜、梅を一晩夜干しする(夜露をとる)と一層柔らかくなる。
2 その後、別容器に小出しして、底に少量の液を浸しておくと、梅干しらしい形と硬さになってくる。