白山2
ご 来 光
漆黒の闇の中を懐中電灯の明かりだけを頼りに歩く
御前4時の山は冷気に包まれ
列をなして歩く人々に従って
一歩ずつ登りの道を進む
石ころばかりの山道は
山頂が近づくに連れて険しさを増し
息がだんだんと荒くなり心臓が痛い
厚着をして着膨れた体に汗が流れる
曲がり角を一つまがるたびに
頂上へと近づいたような気がして
しばらくは足どりも軽い
いつの間にか拝殿の前を通り過ぎ
山頂に到達していることに気づく
岩場の前方に場所を占め
寒さに震えながらご来光を待つ
横雲の間から金色の光の帯が
解き放たれた鏃のように
まっすぐに伸びていく
雲海に浮かぶ孤島のような山々が
夜明けの薄明かりの中に
ゆっくりとうかび上がり
みるみるうちに薔薇色の光に包まれてゆく
ご来光を見つめる人々の笑顔が輝いている
研ぎ澄まされた冷気の中で
白山は残雪を残したまま一日を始めた
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