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今回は競技マジックに対する私なりの疑問と提案について書いてみます。マジックに限らず遊びの競技イベントは、その遊びのレベルとか話題性を飛躍的に高めるために必要な物だと思います。ですから競技マジックという仕組みそのものが、本来はマジックの知名度アップや拡販に大いに貢献するはずなんです。ところが日本の競技マジックでは、このカード拡販の部分にあまりにも重みが置かれすぎている印象が強くあります。だから実際にやってることは最もカードが売れるであろうフォーマットの普及にとどまっていて、しかもその内容はかけ声でデュエリストをあおってるだけだったりします。確かに日本選手権や高校生選手権の表彰内容は充実しました。しかしそういうハイレベルな競技マジックに手が出せる、要するにその表彰の恩恵にあずかれるデュエリストって、ほんの一握りの存在でしかないですよね。本来こういった競技を広める場合、もっと底辺層のデュエリストに至るまで手厚くサポートをすべきだと思うんです。できないはずはないですよ。だってマジックよりも市場規模が小さいと思われる大部分の国産TCGが、それこそ発売初期の段階からそういうサポートをしています。しかもメーカー主催の全国規模の大会で参加費を全く徴収せず、それで豪華な賞品(海外旅行とか自動車)を提供している物すらあるんですから。
それと最近の競技マジックのシステムは、どうもデッキは作れなくてもデュエルが強い人のみを優遇しているような気がします。でも私なんかはデュエルはうまくないけど強くてユニークなデッキが作れる人の方が、マジックにとっては必要な人材ではないかという気がするんです。実際に日本の競技マジックは現在、そういうデュエリストが創ったデッキの輸入によって支えられている部分がかなりあるんです。しかしそういうデッキ・クリエイターに対して競技マジックの世界は何らのサポートも支援もしていませんよね。これじゃあそのうち誰も自分でデッキを作らなくなったりはしないんでしょうか。このままだといつまで経っても日本のマジックって世界レベルにはなれませんよね。本来マジックという遊びはデュエリストに多種多様なスキルを要求します。だからマジックは面白い、私は今でもそう信じて疑っていません。でも実際に競技マジックの世界で表彰の対象になる(=賞金が稼げる)スキルはその中でも極めて限られる。だからデュエリストの育ち方がいびつになっちゃって、満足にデッキ構築はおろかトレードすらできないデュエリストが大勢育っちゃう。そんな気がするんです。
最近ちょっと考えてるんですが、本来マジックという遊びの競技化って、例えばF1のようなチーム表彰制にすべきではないかと思うんです。メタ・ゲーム/デッキ構築/テストプレー/そして実戦で対戦をするプレイヤー、そういった役割を担う人達をチーム単位で表彰すべきなんじゃないかということです。しかし実際にこういうシステムになると、多分今までとは違う色々な動きが起こるだろうと思います。例えばデッキ構築チームまでが表彰の対象になるとすると、まず間違いなくデッキ情報の隠蔽が始まるだろうと思うんです。本番になってみるまで他のチームがどういうデッキで来るか分からない。大きな大会が終わるまで最新のフォーマットで有効なデッキ情報が出にくくなる。でも私はそういうのって悪い話だとは思えません。だって今までがデッキ・クリエイターに対する恩恵というか報償が無さすぎたんです。それが例えば国内選手権とか世界選手権を前にすると各チームが自分たちのデッキ情報を隠して本番に備える。そうなると今まで他人が発信したデッキ情報に頼り切っていた競技プレイヤーも自分でデッキを作らざるを得なくなるか、あるいはデッキ構築やテストプレーをするための組織化を余儀なくされます。そうするとプレミアイベントに投入されるデッキにバリエーションが出て、結果的にイベントそのものも面白い物になるんじゃないかと思うんです。
あと日本のマジックというか、日本で“競技”を名乗る遊びって、とにかくプレイヤーをナンバーワンにさせたがります。でもよく考えてみると、本当の意味でナンバーワンになれる人ってこの世に1人しかいないんですよ。ではナンバーワンになれなかったプレイヤーは偉くないんでしょうか。そうじゃないですよね。しかも参加者が10人の大会で決まるナンバーワンよりも、参加者が10万人の大会で決まるナンバーワンの方が凄いに決まってます。つまりそれだけ多くの礎があるからこそ、大会で決まるナンバーワンには価値があるんです。しかしその事をちゃんと理解して運営されている競技マジックのイベントって、少なくとも私はお話を伺ったことがありません。以前にホビージャパン主催のプレミアイベントの予選会で「参加者が300名を越えたらシングルエリミネーションにします。」とかいう告知が出たことがありますよね。こんな運営を平気でやっちゃうイベントが、参加者を大事にしてるとは私にはどうしても思えなかったりするんですが。というか、少しでもイベントの参加者をお客様だと認識して感謝の気持ちを持っていれば、普通そんなイベントは企業として企画しないと思いますよ。
私は思うんですが、本当にデュエリストが目指すべき、あるいはデュエリストに目指させるべきは、ナンバーワンではなくてオンリーワンなんじゃないでしょうか。弱くてもいいから自分でデッキを創る。デュエル中の会話が面白くて、初心者の面倒見もいい。フリーの対戦や非公認の大会には訳の分からないデッキでやって来て大暴れ。しかしプレミアイベントがあるときっちり強いデッキを使って戦績を残す。これが全部できるスーパーマンはそうはいないでしょうけど、でもどれか1つか2つにもの凄く長けている。そういうこの世に2人といないユニークなデュエリストを大勢育てること、それが本来は競技マジックの主目的になるべきなんじゃないかと思うんです。実際世の中を見渡してみると、多くのスポーツや遊びの世界では人間的な魅力にも優れた超有名プレイヤーが競技の世界を引っ張っています。そういう競技ってやはり話題性にも富んでいて、見ているだけで面白いんです。日本のマジックがそういう世界になっているとしたら、もうちょっと競技マジックの世界と一般デュエリストとの距離は近い物になってる気がします。でも実際はどうでしょう、例えば「今年の世界選手権に参加する日本代表のお名前は?」という質問に、一体日本のデュエリストのどの位の割合の方が答えられるんでしょうか。
競技の世界は人を礎として発展する物です。だから本来は人を育てることを常に念頭に置いて、それを主目的にするくらいの気構えで推進すべきなんです。人が育てばその競技が発展し、結果的に人が増えて物が売れるようになる。それが競技と遊びの世界を仲良く発展させる最善手なんじゃないかと私は思っています。実際に日本の競技マジックがそのことを意識し、そして成功しているのか。これは多分みなさんに考えていただくのがいいんじゃないかと思います。でもそれがうまくいっているのならば、日本のマジックってもうちょっと元気いっぱいな話題性に富んだ遊びに成長してるだろうと私は思いますが。
という事で、次回のテーマはデュエリストの未来像にしたいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。