情報とのお付き合い 
 
 

 今回は情報とのお付き合いの仕方のお話です。

 私達はマジックの世界にある様々な情報と、果たしてどう接してお付き合いすればいいんでしょうか。私達はよく「情報とは我々ユーザーが利用するものであり、我々が情報に利用されてはいけないんだ。」という教訓を口にします。確かに情報をより賢く利用するためには、そういう気構えは絶対に必要なものだと思います。でも実際には私達はしばしば情報に利用されます。そして買わなくてもいい物を買わされちゃったり、自分達が本来持ってた選択肢や可能性を自ら狭めちゃったりしてますよね。

 マジックの世界にある情報、特にウィザーズ社やホビージャパン、そして競技マジックに関わる方々からの情報を見てると、私達はマジックという遊びにある種の固定観念を持ってしまう気がします。それは一言で言うと「マジックというのは予算を気にせずにひたすらカードを買い、最新の情報を見てデッキを作り、そしてDCI公認トーナメントで結果を出す遊びだ。」というものです。でもこういうのってかなり競技プレイヤー的な発想だと思います。というか、そもそもこんなゲームを遊びと呼べるんでしょうか。まずほとんどのデュエリストはマジックを遊ぶにも予算の制約を持ってるはずです。そしてマジックのデッキ構築やトレードといった要素も楽しみたいと思うはずですし、更に公認トーナメント以外に気軽に参加できるフリー対戦やイベントもあって欲しいと思うはずなんです。しかしそういったデュエリストのニーズを、今や世の中のマジックの情報というのは、まるでそういうものに全くニーズがないかのように無視しちゃってますよね。

 ところがその一方でそういったマジックの情報がマジックというTCGの市場を支えてるという一面があります。例えば最近マジックでは人気のレアカードが1枚3000円オーバーで取り引きされることが珍しくありません。そういうカードがなぜ売れるのかというと「このカードが強い」「最強のデッキを作るにはこのカードが不可欠だ」という情報があるからなんです。つまりそういう最強のカードやデッキの情報が販売店の広告代わりに流されてる。言い換えるとマジックの販促にそういう情報はもはや必要不可欠になってる。そういう見方もできそうな気がします。でも最近はそういうカードショップの価格表が1つの情報となって、逆にマジックの世界に不利益を与えてる面があります。特定の人気カードが投機目的で取り引きされて本当に必要な人達の手元に渡らない。あるいは価格表を元に自分が一方的に得をするためのトレードを持ちかける。そういう事例が実際にあちこちで見られるようです。

 最近マジックの世界で最も重宝される情報、それって突き詰めてみるとマジックでお金を儲けるための情報だったりします。プレミアイベントで賞金を稼ぐための情報。カードを売買するための情報。そういうのばかりなんですよね。確かにそういう情報はある意味では必要なんだと思います。でも本来こういう遊びに関わる人達って、純粋に遊びを遊びとして楽しみたいという人が大部分なんじゃないでしょうか。そういう人達に必要な情報がマジックの世界にはほとんどない。言い換えるとマジックの情報がごく一部の人達、極論すればホビージャパンといった売り手や一部の競技プレイヤーの利益につながるものにしかなってない。だからその情報をいくら見聞きしてもマジックが盛り上がらないし、むしろ見聞きすることでマジックへのモティベイションがどんどん低下しちゃう。そういうことなんじゃないでしょうか。あ、なんかこの辺の下りって表現があいせん君っぽいですね。

 最近マジックに携わる人達の間では「実は今マジックを本当に楽しんでるのは、ある種の閉鎖空間にいる人達なんじゃないか。」というお話がよく言われます。デッキの情報もトーナメントの情報も見ない。それどころかシングルカードの価格表にすら接する機会がない。そういう環境でマジックを遊んでるデュエリストが、実は今一番マジックを楽しんでる。これは特に競技マジックに関わられてる多くの方々が否定されるご意見だろうと思うんですが、でも私はそれも1つの事実なんだろうと思ってます。だってそういう遊び方をしてると、例えば自分が買ったカードを「これ使えないよ。」なんてカードケースに沈めちゃうことはあまりないんじゃないかという気がするんです。自分が好きなときに予算の範囲内でマジックを買い、そのカードを端から端まで遊び尽くす。新しいカードが手に入ればデッキを考え、友達が珍しいカードを持っていればあれこれ知恵を絞って、例えばラーメンをおごるなんて方法も使ってトレードで出してもらうことを考える。そしてデュエルをすると自分が今まで知らなかったカードやデッキと常に対戦ができる。どうです、そういうマジックって昨今の競技的なマジックよりも遙かに面白そうだと思いませんか?

 私が日本のマジックを見ていて不思議なのはデュエリストが競技指向なのかそうじゃないのかがよく分からないということです。競技指向の強いデュエリストにはデッキ情報やカード価格の情報は間違いなく必要になるでしょう。しかしそもそも競技指向がそれほどない、マジックをそれこそ月に数千円程度しか買わないデュエリストにとって、デッキ情報とかカードの情報って本当に必要なんでしょうか。だってスタンダードの強いデッキって間違いなく高価なレアを大量に必要としますよね。そもそもそんなデッキを月々数千円の予算で組めるとは私にはどうしても思えないんですが。でも実際にはそんなことはお構いなしにデッキ情報は発信されてて、しかもそういうカードがなかなか買えないデュエリストへの代替案が日本のマジックからはほとんど発信されない。これでは多分予算の少ないデュエリストはマジックに定着できないんじゃないでしょうか。何よりも最近の日本のマジックには「マジックにより多くの金を払うことが正義だ」みたいな風潮があるようですし。ただそれで作ってるのがコピーデッキだけでは、あまりにもコスト・パフォーマンスが悪すぎですよね。だからマジックからどんどん人が離れてる。そんな図式もちょっと見えちゃったりします。

 これはどなたかに一度計算していただきたいと思うんですが、あのGAMEぎゃざに載ってるデッキを個人が再現するのに、一体どの位の予算が必要なんでしょうか。その予算が仮に月2万円、あるいは年間20万円といった数字になるとして、もしあなたが月に3千円ほどしかマジックを買わないとしたら、ひょっとするとそもそもあなたはGAMEぎゃざの情報なんか読む必要がないのではないか。要はその位情報の価値って疑ってかかってみてもいいと思うんです。GAMEぎゃざには低予算でマジックを遊ぶための工夫とか、パックから引き当てたカードを隅々まで楽しむための提案なんてほとんどないですもんね。そして同じことが実は日本中の大部分のマジック情報にも言えるかもしれないです。持ってもいないカードを使えと言われるデッキ診断、ひょっとすると一生手に入らないかもしれないカードの値段、そんな情報が本当に必要なんでしょうか。少なくとも私はそういう情報を見なくなって、それでもマジックを大いに楽しんでるデュエリストを何人も見てますよ。

 という事で、次回のテーマはマジック情報の発信にしたいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。

     

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