お店のことを考える理由(わけ) 
 
 

 第五部は“マジックを売ってるお店”のお話を書きますが、今回はその一回目としてなぜ私達がお店のことを考える必要があるのかについて書いてみます。

 普通一般的な商品の流通を考えると、商品は一度お店からお客さんに売られると、その時点でお店とお客さんの関係は途切れても別に不思議じゃありません。またお客さんは自分にとって少しでも有利な値段、あるいはサービスやサポートを提供してくれるお店で物を買うのが当たり前です。ですから他のお店よりも安く物が売られないお店や、よいサービスを提供できないお店が市場から次々と消えてる。それが現実なんだろうと思います。

 ではそういういわゆる市場原理だけで日本のマジック市場を考えると、果たしてどうなるんでしょうか。そうするとまず間違いなく日本語版は買われなくなっちゃうでしょうし、ましてやホビージャパン経由で流通してる高い英語版なんかいよいよ売れないはずです。中身が全く同じ商品がかたや500円、一方で300円で売られてるとしたら、普通に考えると500円の商品を買う消費者はいないからです。というか、500円の商品を買うのは消費者として愚行ですらあるんですよね。でも実際にはホビージャパン経由のマジックは今もそれなりに売れてる。それは私が考えるにホビージャパン自身のお手柄じゃなくて、多分それでも高いパックを買ってもらえるようにお店が頑張ってるから売れてるんです。しかもそのホビージャパンは自身の雑誌でマジックの競技性をうたい、いよいよ高いパックへの購入意欲を失わせるような、自分で自分の首を絞める販促しかしてません。それでも日本語版や高めの英語版が売れてる。それってお店が頑張ってる何よりの証なんだと思います。

 それとマジックに代表されるトレーディング・カードゲームの世界には、一般的なおもちゃの流通にはない独自の仕組みというか文化があります。マジックは売った時点、買った時点で終わるものではありません。マジックがトレーディング・カードゲームというジャンルの対戦型ゲームである以上、当然トレードや対戦をする相手がいないと遊べないのです。そのマジック仲間をどうやって確保し、そして増やしていくのか。そこにお店が深く関わってるんです。店頭にデュエルスペースを設けて仲間同士集まる場を提供してくれたり、定期的にイベントを開いて見知らぬマジック仲間との出会いの機会を作ってくれる。だから今までマジックはなんとか遊ばれ続けた。そう言い切ってもあながち間違いじゃない気がします。

 しかしよくよく考えてみると、そういうユーザーサポートには間違いなく経費がかかってます。極端なことを言っちゃうと、あるお店がお客さんにマジックを1パック売ると、そのお客さんがマジックをやめるまでサポートは半永久的に続くんです。しかしその間お店がそのお客さんから1円の収入も得られないとすれば、そういうユーザーサポートは実現が不可能になります。ですから私達デュエリストがマジック販売店にそういう半永久的なユーザーサポートを求めるのであれば、当然逆にお店としてはそのお客さんが半永久的なリピーターとなってマジックを買い続けてくれることを期待してるんです。でも実際にはお客さんの多くは安い並行輸入の英語版に流れてしまってる。おまけに「昔ここで1パックだけ買ってやったじゃねえか。」で常連面され、デュエルスペースやイベントで我が物顔で暴れる人すら現れる。そりゃあ普通に考えればお店がマジック販売からの撤退を考えるのは当然でしょう。そしてそういう積み重ねで日本のマジックはどんどん遊びにくい環境になってしまった。多分そういうことなんです。

 今回のお店のお話で考えてみたいのは、私達デュエリストがマジックの消費者としてどういう形でマジックを買うのがより正しい姿なのかということです。並行輸入の業者さんは確かに安くマジックを売ってくださいますが、でもあなたの地元でイベントを開いてもくれなければ、地元でいつでも会えるマジック仲間を紹介してくれたりもしないでしょう。マジックという遊びがTVゲームみたいに1人だけで遊べる遊びなら何の問題もありません。またネットゲームのように自宅にいながら大勢の人達とゲームが楽しめるのなら別に構わないのです。でもマジックは残念なことにゲームシステムが古くて、デュエリスト同士がどこかで会わないとゲームが楽しめないのです。デュエルスペースやイベントがないマジックなんて、多分商品価値としては半減あるいはそれ未満になっちゃう気もします。ではそういうマジックの商品価値を高めるための工夫や販促をしてくれてるのは誰なのか。そう考えると今まで通りのマジックの買い方で本当にいいのかというお話も出てくると思うんです。

 あ、でも私はだからといって、日本のマジック販売店を甘やかすだけの意見をここで書こうとしてるわけじゃありません。お店である以上は当然企業努力はすべきなんですが、中にはそういう努力を全くしていない、あるいは自分の利益を確保するためだけに奔走するお店もあります。また残念なことにお店が行ってる販促が逆にその地域のマジック文化に悪影響を与え、その地域のマジック・コミュニティを崩壊させてるケースすらあるんです。今回私はそういうのを個別に事例を取り上げるつもりはないんですが、なんかあいせん君の方は色々と事例集を取り揃えて手ぐすね引いて待ってるそうです。でもそういうお話を聞くと、本当「こんなお店はなくなっちゃった方がいいかも。」と思いたくなるようなケースもあるんですよね。

 という事で、次回のテーマはよいお店の条件にしたいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。

     

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