よいお店とは 
 
 

 今回はよいお店とはというお話です。

 お店はお客さんに商品を売って、お金をいただいて成り立つものです。そう考えると実はお店ってオーナーや店員の理想だけを追求しても決して成り立つものではないんです。もちろんお店やそこのスタッフが理想を持つことは大事ですし、実際にお店の中にはオーナーが自らの理想を追求して、限られたごく一部の常連さんだけを相手に商売を考えるお店だってあります。でも結局はそれにしたって、一定のお客さんから一定以上の売り上げをあげなければお店は維持できません。例えば昔ながらの老舗にはそういうお店が多いんですが、特に最近はお店の維持が難しいようで経営方針を変えるお店も増えてるみたいです。やはりお店って最終的にはお客さんのことを考えて経営方針を決めざるを得ないんです。

 ではマジックの世界では、なぜお店が維持できないケースが多いんでしょうか。他の業界に比べてお店にやる気がないのかというと、決してそんなないでしょう。しかし日本ではマジックのショップ経営は難しいと言われ、実際に多くのお店がマジックから撤退してますよね。これには色々と事情があるようです。

 まず何よりもお店がマジックをどう売っていいのか分からないというのがありそうです。例えば日本のマジックショップがすべて定価(税別500円)でフレッシュパックを売って、しかも何らのユーザーサポートもしないお店ばかりだとしたら、果たしてマジックは日本でこれだけ遊ばれたでしょうか。多分そうはならなかったでしょう。でも以前のホビージャパンって、そういうお店がマジックを売ることを歓迎してた節があります。要するに「マジックはこれだけ多くのお店で売られてるメジャーな商品なんだ。」というイメージを世間に与え、それで更にマジック取扱店やマジックの流通量を増やそうとしてた。そういうことです。しかもそういうお店が自分達が設定した高めの価格設定にも文句1つ言わないのであれば、そういうお店って少なくともホビージャパンから見ればまさに理想のお店ですよね。そういうお店が日本に増えれば、たとえ末端でどれだけマジックが売れ残ってだぶつこうが、ホビージャパンや問屋は自分が抱える在庫を綺麗にさばけるでしょう。そしてそういう口車に乗せられて不用意にマジックに手を出しちゃったお店が少なくない。そのしわ寄せが今ここに来て出てるんだと思います。

 あと日本のマジック流通がそういう形で発展してきたことで、日本のマジック販売店の中に一種の怠慢さが生まれてしまった。そういう可能性もありそうな気がします。ホビージャパンがああいう売り方をして成功してるなら、自分達だってそれを真似すればいいじゃないか。そんな感じでしょうか。例えば渋谷のトーナメントセンターは月に5000円なんて高額な利用料で営業してて、しかも利用者からは「変なお子さまとか来ないからいい感じだ。」という好印象すら聞かれます。そうなるとお店が「自分達も同じことをやればいい。」と考えるのは多分自然な発想だと思うんです。お店のデュエルルームやイベントを有料化、それも普通の小中学生なんかには払えないような高額な料金設定をして、それで「これはうちのデュエルルームやイベントの雰囲気を維持するための措置だ。」とその行為を正当化する。そんな感じです。でもそれってそもそも変だと私は思うんです。だって渋谷のセンターとかお店のデュエルルームって、それこそ月に数パックしかマジックを買えないようなデュエリストの売り上げが積もりに積もって経費が捻出できてると思うんです。これは各種のイベントを開催する際の経費にしても同じです。それをいざとなったら「これは俺達に更に金を払えないヤツには利用させないよ。」は変でしょう。これは例えば日本選手権の参加資格が「ホビージャパンに3000円を払える人」でしかないことにも同じことが言えます。日本選手権で支払われる賞金5万ドルって、果たして誰のおかげで確保できてるんでしょうね。イベントの参加者やデュエルルームの利用者のレベルをある一定以上に維持したいだけなら、なにも持ってるお金でお客さんを差別化する必要はないはずです。それって発想が単なる商業主義なのを別の言葉で正当化してるだけですよね。

 私とかあいせん君は、別に儲かってもいないお店にサービスやサポート、あるいは値下げを要求してるわけじゃないんです。でもちゃんとお店が儲かったらその感謝をお客さんに還元する。そういう当たり前の姿勢がないお店は世の中には不要なんじゃないか。言いたいのはそういうことです。だって世の中には同業種の競合店なんかごまんと転がってます。その中で自分がある特定のお店を選んで利用する。それにはお客さんだって根拠や裏付けが欲しいんです。最近はどうもそれが「あの店はこの近隣で一番安くカードを売ってる。」だけになってて、正直言うと随分と商売がやりにくい環境になっちゃってる気もします。しかしそういう中でもサービスやサポートで他店との差別化に成功してるお店だってたくさんあります。ではそれができてるお店とできてないお店の違いは何か。それは多分店長やスタッフのやる気という、極めて基本的でかつお店にとってはなくてはならない要素なんだろうと思います。

 自分のお店がお客さんに利用されるかされないか。あるいはその客層が自分が思い描いてた理想に近い物かそうじゃないのか。それって基本的にはそのお店のスタッフが自分で作り出した結果だと思います。これについてあいせん君はよく「お店に来るお客さんの様子はそのお店自身を写す鏡だ。」という言い方をします。自分のお店が周囲からどういう評価をされてるか。そんなのお店に来るお客さんの様子を丸一日観察してみれば大体分かりますよね。その結果はやはりそのお店のスタッフが自ら生み出してるものなんです。ではなぜそうなったのか。それはそのお店のスタッフ自身がそういう人間だったからなんだ。多分そういうことだと思います。他の誰のせいでもないんですよ。そして日本のマジックがデュエリストだけでなく、マジックのお店もちゃんと育ててこなかった。だからそのツケが今になって回ってきた。そう考えると今日本のマジックで起こってる様々な現象って、意外と簡単に説明が付いちゃうんですよね。

 という事で、次回のテーマはよいお店の作り方にしたいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。

     

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