よいお店の作り方 
 
 

 今回はよいお店の作り方というお話です。それで今回このお話を書く素材としてスポーツ用品店、特にプロショップと呼ばれるようなお店を例に取り上げてみたいと思います。

 例えばあるスポーツ用品店がテニスプレイヤーにラケットを勧めるとします。プロショップといっても普通は一般のプレイヤーも相手に商売をするはずなんで、そのお店の店員さんは初心者からプロ選手まで幅広い人を相手にラケットを売ることになります。そういうときに店員さんはプレイヤーであるお客さんにどういうラケットを勧めるでしょうか。言うまでもないですがそのプレイヤーに合ったものを真剣に考えて提案するはずです。例えばお客さんが「あのプロ選手が使ってるのと同じモデルがいい。」と言えば、それはそれでそのラケットを売ってあげればいいんです。でも大抵はそのお客さんの技量や予算、プレースタイルや癖などを見てできるだけ理想に近いラケットを選ぶでしょう。そういうラケット選びをテニスの初心者からプロ並の腕前の人に至るまでサポートできる。そういうラケット選びができないお店は、そもそもプロショップとは呼べないし呼ばれないはずです。

 これはお店全般に言えることだと思うんですが、お店が何をさておき最も優先すべきなのは多分お客さんのはずです。例えばテニスにそんなに予算をかけられない人にお店が20万円のラケットを口八丁手八丁で買わせたとします。そうするとお客さんはその他のテニスウェアなどに予算が回らなくなり、またテニスコートに行くための費用もなくなってしまうかもしれません。するとこのお客さんは自然とテニスから遠のいてしまうはずです。そして「なんであのお店はこんな高いラケットを私に勧めたんだ。全く金儲け主義にも程がある。」という心証を持つでしょう。しかしもしそこで最初にこのお客さんに1万円のラケットを勧めていたら、ひょっとするとこの人はその後10年以上テニスを続けたかもしれません。場合によってはそれをきっかけに超有名なテニスプレイヤーになり、その活動の中で「私の今があるのはあの親切なお店のおかげだ。」といった宣伝をしてくれたかもしれません。これはかなり発想が飛躍してると思うんですが、でも少なくともそのお客さんが今後も永続的にお店でテニス用品を買い続けてくれることは十分期待できたはずです。でも実際には目の前の20万円の売り上げに目がくらんで、より大きな利益を得られない。それどころかお店の信用そのものを失って経営が行き詰まる。そういうお店は多分この世にごまんと転がってる気がします。

 そのお店が本当の意味でお客さんのための商売を考えるならば、そのお店のスタッフは自分のお店がプロショップと呼ばれるに相応しいだけのスキルや経験を身につける必要があります。様々なレベルのお客さんを満足させ、適切なアドバイスや商品選びをサポートする。そしてその商品をお客さんが納得できる値段で提供する。そういう販売をしないお店はプロショップとは呼べないのです。また接客も重要です。同じ値段の買い物なら、お客さんは気持ちよくお金を払えるお店で物を買いたいんです。そんなの当たり前ですよね。ですから店長を始めとするスタッフには豊かな知識と経験、飽くなき探求心や向上心、そして魅力ある人間性が必要なんです。

 では今のお話をマジックに当てはめてみましょう。つまりマジックのプロショップに何よりも求められる要素、それは多分デュエリスト個人のレベルや事情に応じたマジックの遊び方を提案することなんです。確かに某雑誌や競技マジックの情報を見せれば、目の前のお客さんは勢いで1度や2度はBOXや高価なシングルカードを買ってくれるかもしれません。でもそれで「買ってはみたけど遊び方が分からなくて、買ったお店で聞いても満足な答えが出てこない。こんな遊びは不安で続けられそうにないよ。」とか「マジックって負担が大きい割に面白くないよな。やっぱりやめた!」と思われてしまったのでは元も子もないんです。個々のデュエリストのレベルや事情に合ったマジックの遊び方を提案してあげる。色々なレベルや趣向を持った人達にマジックの楽しさを知ってもらい、末永くお店にお金を落としてもらう。そういうお店が必要なんです。ただ「そんなの1軒のお店じゃサポートしきれないよ!」というご意見は間違いなくあると思います。それならせめてある一部のスキルに特化したお店を作るべきだと思います。徹底的にカードが安い。他店とは比較にならないくらい充実したサービスをしてる。デッキ構築やプレイングに充実したアドバイスができる。何でもいいですからそのお店の売りを作り出す。そういう必要があると思います。

 …ええっと、実を言うとここまではこのお話の導入部分なんですが、なんかまたあいせん君に「また長いよ (^^; 」とか言われそうなので、今回はここまでにします。という事で、次回のテーマはではなぜマジックにはそういうお店が作れなかったのかにしたいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。

     

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