競馬の経済学( 2003.10.12 )
 競馬は今や、日本で数少ない“大成した娯楽”の1つに挙げて間違いないかと思います。ちょっと調べてみたら、1つのGIレースで実に200億円台の売り上げを挙げているんですね。私自身も横浜で会社員をしていた時代、何度か同僚に馬券を買ってもらってきたりしていました。

 しかしよく考えてみると、競馬って1枚100円の勝馬投票券(これが馬券の正式名称)からすべてがスタートしているんですよ。単純に計算すると1つのGIレースで約2億枚の馬券が売れている事になります。じゃあ、このシステムを改めて「馬券を1枚1000円あるいは1万円スタートにしよう。」と思い立って実行した場合、果たして競馬の売上は大幅に上がるのでしょうか。むしろ結果は逆で、その売上は大幅に落ち込むことになるだろうと思われます。

 ところがどうも世の中の多くのゲームは、ちょっと人気が出たからと言って安易に売上のアップを狙い、事前に十分な吟味もしないまま意図も簡単に馬券の値段を上げてしまうのです。言い方を変えると“そのゲームに関わるために最低限必要なミニマムアクセスを吊り上げてしまう”という事です。しかし世の中でタクシー離れが進んでいるなんて事例1つ見ても明らかなように、値上げで収益が上がるなんてのは完全な夢物語なのです。

 さすがに昨今のゲームを100円で楽しませてくれなんてわがままは言いません。ただあるゲームを取りあえず試食してみる、あるいはある程度その面白さや楽しさが分かるまで吟味してみる。その際にかかる費用や時間は少ないに越した事はありません。ところが世の中のゲームの多くはコアユーザーを満足させるために巨大化&複雑化していて、それこそ万単位の投資と膨大な時間をかけないと面白さを体験できない・・・いや、そんなゲームが本当に面白いのかはかなり疑わしい気すらします。あと“自社が絶対に損しない値段設定”なんてのはそれこそ論外でしょう。だから売れなくなって結果的に損をしている。その事にそろそろいい加減メーカーもユーザーも気が付くべきだろうと思います。

 あと、競馬は様々なイメージ戦略などによって多くの女性ファンの獲得にも成功しています。この事も現在のゲームメーカーにはほぼ完全に失われてしまった視点であり、そういう点でもゲーム業界は競馬に学ぶべきだと私は思います。繰り返しになりますが、ある娯楽が成功するにはちゃんと理由があるし、同時に失敗するのにもちゃんと理由があるのですよ。




前の日誌へ次の日誌へ
屋根裏部屋 Index へ

 
このコンテンツに関するご意見/ご感想は、すべて e-mail でのみ受け付けています。