果報は寝て待て( 2004.12.2 )
 唐突ですが、今回は「日本向けに支出されている Magic の賞金は、果たして市場の実状から見て適正な額なのか?」というお話です。

 現在日本国内で開催されている主なプレミアイベントを挙げると、賞金総額が$25000のグランプリが4〜5回ほどと、$50000の日本選手権、あと100万円のFinalsですか。その賞金の合計は(円相場による変動を考慮して)2000万円〜2200万円程になるでしょうか。これらについて公安当局から賭博性を疑われないようにするためには、その賞金すべてを事前に捻出して、いざという時にその事実を明確に証明する事が必要です。つまりこれらの賞金はWoCが日本国内向けに売り上げた Magic の利益の中から支出する必要があるわけです。(残念ながら競技 Magic のイベントには、未だに外部のスポンサーが付いている状況にはないですので。)仮にHJ経由の Magic の売上を年間10億円と仮定すると、恐らくWoCの懐に入る売上は7〜8億円程度ではないかと思われます。それでブロッコリーの決算資料を参考にすると、TCGメーカーが得る売上額に対する利益率は3割程と推定されるので、WoCが手にする利益は2億円台前半〜半ばではないかと推定されます。

 一般的な企業経営という観点から見ると、限界利益(粗利)に対する販促費用の比率は大体20%が上限なんだそうです。従って2億円程の限界利益から2000万円を越える賞金を捻出する現状は、普通に考えると企業にとって厳しいと言わざるを得ないでしょう。しかも、ここには認定トーナメントに関する事務経費や、他の大きな認定トーナメントへの賞品提供といった経費は全く盛り込まれていません。またこの経費はここ数年、認定トーナメントの開催数増加に比例して増えているはずで、あまつさえその負担増に反比例するかのように肝心の売上の方は減っていると推定されます。こうなると今は“ Magic は競技イベント以外の販促がほとんどできない状況にある”と言ってもあながち間違いではないと思います。しかもHJ経由の Magic の売上が10億円というのは、現状では高めの推定であると言わざるを得ません。ひょっとすると並行輸入の分を含めてようやく・・・という感じではないでしょうか。つまり現実はこの試算以上に厳しい可能性も否定できません。じゃあ、なぜそれでも日本の Magic イベントは規模や賞金総額が維持され、それに加えて都道府県選手権の開催とか、雑誌などでの広告といった手が打てているのか。それはやはり“デュエル・マスターズの存在”無しではその理由に説明が付かないでしょう。ですからもし日本でのデュエル・マスターズのヒットがなかったら、既に1〜2年前に日本選手権の賞金総額の減額が行われていた可能性は十分あり得ます。デュエル・マスターズは Magic と比べると限界利益率も高そうですし。

 今後更に日本国内での Magic 販売額が減り、しかしそれでも Magic の賞金総額が減らされない。(あるいは更なる Magic の低迷が懸念されるため減らせない。)それは、それこそ私が前から危惧してきた「 Magic のプロがデュエル・マスターズを買っている子供達に食わせてもらう」という状況に陥ることを意味します。というか、恐らく今は半ばそういう状況に陥りつつあるでしょう。それが当たり前になってしまうのはあまりにも淋しいだろうと思いますし、さすがに今後何年も続けられるような状況でもありません。何よりも本来、デュエル・マスターズで上がった利益はデュエル・マスターズのユーザーに還元されるべき物なのですから。日本での Magic をブームにする必要はないし、また今更できないだろうとも思われます。 (^^; しかし Magic が持つほぼ唯一の販促手法、あるいは自慢であるはずの競技界を自活させられているかが疑わしい。こういう現状には明らかに問題がありますし、こんな不安定なプロの世界で優秀なプレイヤーは育たないでしょう。またいずれ当局からプレミアイベントの賭博性(=参加費がそのまま賞金に回され、実質的に競技イベントが博打場になっている。)を指摘され、イベントそのものが存続できなくなる危惧もあります。もうそろそろWoCは Magic の現状をユーザーに正確に伝え、できる範囲での拡販とか盛り上がりへの貢献をお願いするという姿勢に転じても良さそうな気がするのですが。

 ・・・という話を書いたのが実は2日ほど前で、今日の夕飯後にでも公開しようと準備のためパソコンを立ち上げたらメールが来ていて・・・。ちょっと事が事だけに、正式な発表かそれに準ずる確定的な情報がないとコメントできません。ただ私個人としては「ついに来るべき時が来たか。」という印象ですし、私自身の Magic に対する姿勢に今後劇的な変化が起こる可能性も否定できないだろうと思います。




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