久遠下種
(くおんげしゅ
) 関連語句 久遠。下種。種熟脱 久遠の昔に下種結縁を受けたこと。または、その衆生をいう。久遠は『法華経』如来寿量品第十六に示される釈尊の五百塵点劫成道のことで、下種は種・熟・脱の三益の最初で、仏が衆生に成仏の因となる種子を下すことをいう。 天台智が『法華文句』巻1に示した四通りの種・熟・脱(四節三益)の内、第一と第二が久遠下種に該当する。 第一は「衆生、久遠に仏の善巧を蒙り、仏道の因縁を種えしめ(種)、中間に相値いて更に異の方便をもって第一義に助顕して之を成熟し(熟)、今日雨華地動して如来の滅度をもって之を度脱す(脱)」、第二は「復次に久遠を種とし、過去を熟とし、近世を脱とす。地涌等これなり」と説かれている。 『忘持経事』〔22309〕には「久遠下種の人は良薬を忘れ、五百塵点を送りて三途の嶮地に顛倒せり」とあり、久遠において下種を受けた右の二種の内、第二の地涌の菩薩が退転せずにそのまま得脱したのに対して、第一の衆生は中間に悪知識等に遇って退転し、仏の在世に再び『法華経』本門を聞いて得脱したと説明されている。また、この久遠の下種には本果下種と本因下種とが含まれるが、その内の本因下種を強調することによって種脱本迹義に展開するという筋道が想定される。 |