其の壱:空の巻

 第1章:他流の道を知る

 他流の道を知ること。他人の戦法を書き付け、この巻に表わす。
 他流の道を知らずしては、我が一流の道も、確かにはわきまえられまい。
 あらゆるジャンルに貴賤は無いが、ジャンルの中には確かに貴賤は存在する。
 貴いモノは、実の道に通じるきっかけと成り得るが、賤しいモノは、芸当となりはて、 金策のためとなり、色を飾ざり花を咲かせ、売り物にこしらえてしまったのでなんと実の道ではないことか。
 我が一流の理論は、別様のものである。
 他流の不足である点、ひとつひとつこの書に書き表わし、良悪理非を考えたい。
 よくよく吟味して、確かな道を歩むべきである。

 1.スピード指数理論
 (1)SPEED INDEX

 私の記憶が確かならば、競馬に初めてスピード指数の概念を取り入れたのは、
アンドリュー・ベイヤー(Andrew Beyer)氏である。
スピード指数とは、競走馬の走破タイムを数値化し、力関係を明解にしようとしたもので、 いわゆる「タイム理論」は彼の理論が基になっている。
競走馬の能力は、持ちタイムだけで、測り知ることが出来ず、様々なファクターが絡み合うもので、 事実ベイヤーも展開のアヤを評価に加える、トリップ・ ハンディキャッピングなども考慮している。 彼の理論だけを、現在の日本の競馬に持ち込もうとすると色々難点も生じるが、 彼の発想は、「勝ち馬を推測するプロセス」の楽しさを我々に思い起こさせてくれる。
スピード指数理論は最終的には、限界や矛盾点が生じてくるが、私は、現在でも、正統的な 予想手段の最右翼に位置するモノであると考えているし、真の道に通じる最も近いモノとして、 認識している。
スピード指数理論の礎を築いた彼に、私は感謝の意と敬意を表したい。
参考文献:
『勝ち馬を探せ!!』(メタモル出版)
『ウイニング・ホースプレーヤー』(自由国民社)
『競馬探求の先端モード』(自由国民社)



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