第10集 退職あとに
第1章 退職あとに
退職に
来年の退職控え物思う第三ステージどう生きるのか
田舎ゆえ田圃があって畑あり趣味も多いし悩むことなし
退職で気がかりなのは銭金よ年金だけで何が出来るの
気に掛かる老いた両親掛かる孫 退職しても今と変わらず
早々と太陽パネルに屋の始末 退職前に準備を済ませ
あれこれと退職備え準備せど再任用なら何も変わらず
「今日行くと今日の用事」が大事だと物の本には書いてあったが
退職で自由になるのは時間だと旅に趣味にと心躍らす
物心付きし頃から尻押され辿りついたる定年ゴール
財産は息子娘と家ひとつ六十年の人生終えて
退職に その2
職場にて色んな仕事出来たことこれがほんとの我が財産よ
健康で定年迎える幸せよ家族を持てて子供育てて
定年の年まで親父持ち堪えこれもほんとは有難いこと
嫁もらい息子我が家を継いでいるこれとて本来感謝すべきよ
丁度良く定年までに合格か娘受けたる国家試験が
誰一人入院している訳でなく朝晩揃って皆で飯食う
定年を迎える前の野菜世話 気持ちは既に退職気分
時と金豊かな時代の退職はやる気ひとつで何でも出来る
税金に国民保険に生保など退職あとの手続きが待つ
野菜歌
六月の長い日差しと良き雨で伸び伸び育つ畑の野菜よ
三本のキュウリけなげに実を連ね今朝の収穫両手に余る
雨上がり勢い付けし畝のナス実を大きくし収穫を待つ
放任のウリとメロンに目をやればひとつ二つと実を横たえる
毎日のように咲きたるカボチャ花大きくなるのはひとつか二つ
雨降れど屋根に守られすくすくと大玉トマトの熟成進む
六月の今が盛りのモロッコ種 収穫道具はハサミとバケツ
洗濯のカゴに護らるスイカ玉天気が合わず今年は一個
青虫にレースにされたキャベツ葉がそれでもめげず玉大きくし
期待して5本も植えたオクラ株七月入れど未だ変わらず
初めてのヤーコン二本試し植え大きくなれど愛着湧かず
せっかくのトウモロコシの収穫は虫にやられて食い物ならず
モロコシの間に植えたインゲンが幹に巻き付き花つけ始め
ネギ坊主蒔いて育てたネギの苗やっと植え付け追肥をしたり
初めてのメークイーンの顔見たく早いと知りつつ収穫済ます
指先でアゲハの黒虫取り除く田の里芋も放任できず
不満爆発
大事とりスイカに敷いた枯れ草にナメクジ巣食って底に穴開け
若芽食い増え続けたる青虫が我が気力まで食い尽くしたり
冷害に遭いしキュウリの難しき花も少なく実も曲がりたり
六時起き毎日続けば疲れきて心臓波打ち言葉も荒れる
除草剤何回やれば気が済むか 効果が違う薬ばかりで
経験と掛ける時間が違い過ぎ隣の夫婦に我が畑負け
メークイーン
初めてのメークイーンとのご対面雨降る前に年休とって
端正な形と肌の美しさクイーンでしか拝めぬ姿
日光に弱い芋との情報に青い芋捨て保管も注意
松江市のフォーゲルパーク面白き花賑やかに鳥も舞いたり
南国の花や緑があふれ出て高き券さえ高く思えず
試験済み解き放たれた娘を見れば何年ぶりかの穏やかな顔
着飾りし妻と娘と園回る竜宮城にも勝りし時間
二日ほど疲れが残る松江路もこれ行かずして何が人生
キャンパー生活
発電機エンジン掛からずキャブ修理一昨年から一度も使わず
知らぬ間にトイレの浄水故障する水も抜かずに放っておいて
憧れのキャンパー所有の日々なれど職持つ身では使い切れずに
ひと月は旅に出ないと意味がない退職あとのキャンパー生活
三年で交換目処のタイヤなら冬のタイヤを履きっ放すか
退職の夢を託した旅車使わず居るなら夢にて終わる
退職後
定年で週の前半農業で後半旅出て残り家族日
生活のリズムが大事年金者ほどほどやれば長続きする
絵筆持ち車で出かけて絵を描くこれも一つの理想の形
当方は何せ気ままな自由人絵画飽いたら海釣りもよし
雨降ればパソコン向かって文作り老いた頭を活性化する
舞鶴の街
舞鶴の街にたむろの白服は 船を下りたる若き水兵
名物が海鮮物の道の駅 遠距離客の目の色変わり
日が落ちて残りし車は車中泊一等席はトラックが占め
管理され見た目きれいな公園はテロの防止か車が置けず
灰色の軍艦並ぶ舞鶴港 金網越しにて眺めていたり
舞鶴は言わずと知れた軍の街規模のわりには飲み屋が多い
丹波地方
延々と山地が続く京丹波 米が目当ての古出雲入れず
山間といえど車のナンバーは羨ましいかな「京都」をつける
念願の京都縦貫完成し都会の風が丹波を抜ける
名産の黒豆並ぶ道の駅持ち込み農家の箱ごと置かれ
大雨後の畑
山口に被害出したる大雨は清流足羽を濁流と化す
大雨の後の畑は大暴れナスは倒れてトマトは割れる
雨降りで収穫できぬキュウリ達育ち良過ぎてひょうたんの様
対策はナスの頭上にさおを通し枝それぞれを紐で吊るして
すぐ食えば割れたトマトも食えるよとその場で食ったり食卓出したり
雨後の収穫前のマクワウリ泥に半分その実を埋めて
今年の夏野菜
面倒を掛けられぬ分半作よスイカとウリにカボチャ連中
昨年の倍の品種が植えられて朝晩だけでは面倒見れぬ
毎朝の観察だけは欠かさぬが手入れするだけ時間が取れぬ
山盛りの色とりどりの夏野菜バケツに入れて自転車をこぐ
ジャングルで果物探す気分なり背丈越したるミニトマト勢
蔓まくり機械で刈って耕運機 やっと始末の草の林よ
雨上がり収穫盛りのミニトマト赤き実カゴ入れ割れた実口入れ
うどん粉に負けずと延びるカボチャ蔓健気なれどもその実小さく
草陰に静かに朽ちたマクワウリ手さえ掛ければ日の目見たはず
知らぬ間にカラスが突きしメロン玉皮が厚くて口ばし通らず
種用に残したキュウリ色変わりお化けとなってその実横たえ
孫迎え電車見に行く毎日で畑出るのはいつも夕暮れ
八月に入れど明けぬ前線に野菜の生りも梅雨空模様
梅雨明け後
つる物の雑草ひどくて嫌気さし機械で刈って耕運機入れ
毎夕の水遣り嫌とは言わないが孫連れ帰った夕暮れの中
里芋を蛇口近くに植えし父 安心したのか畝水は俺
田の縁に親父に負けずと植えた芋 草に埋もれて息も絶え絶え
トマトらの間で育つナスの株日光不足か病が付きし
穴掘って茄子の株元肥やし埋め元気が出るか枯れるが先か
夏盛り今まで我慢のオクラ株ここぞとばかり草勢延ばす
八月に元気爆発モロヘイヤ幾ら摘めども草勢減らず
ジャングルで大量捕獲のミニトマト収穫バケツの隙間を埋める
十月に収穫期待のインゲンが強き日差しにその葉を枯らす
水やりが要るのか要らぬか判らない初めて植えしヤーコンの芋
世代交代
老親の足の衰え目に見えて田圃畑を息子に譲る
いつまでも甘えて居れぬ農家業 定年機会に覚悟を決める
新同の軽トラ買いし息子には農家をやると決意が見える
外出がめっきり減った我が親父日々の興味は韓国ドラマ
孫の日課
園庭でしばらく遊んでお茶飲んでカンカン見に行く孫の日課よ
車中にて煎餅かじる孫と爺 腹が減っては列車も見れぬ
農協で買い求めたる子のおやつ車中熱くて焼き菓子になる
特急も普通列車も不満足貨物来るまで帰らぬ孫よ
折り畳む椅子を並べる孫と爺 通る車は何をぞ思う
大根の播種
雨降って大根の種蒔き終えるボトルの底で穴を開けつつ
白菜に小松菜も蒔く調子者 大根終えてついでとばかりに
ポンポンと大根蒔いた畝たたく 育ってくれよと心で願い
堆肥入れ黒々している隣の畑 我が畑見れば石ころだらけ
雨上がり大根の種蒔き終えて心静かに秋を迎える
夏の思い出
一台に6人乗って海めざす夏も終わりの週末の午後
千里浜を目指し高速飛ばせどもここで良いかと徳光の海
初めての波におびえる聡一朗パラソル影の椅子から動かず
靴脱いで素足なりたる若親子ときも忘れて波と戯る
波打ちでホットドックに舌鼓 息子親子に妻と娘と
孫連れて親子三代海遊び 今年の夏の良き思い出に
秋の野菜
半袖が寒く感じる朝仕事 夏が終わって秋の野菜よ
それほどに手間の掛からぬ秋野菜蒔く時期外せば収穫ならず
意を決し大根蒔くも早すぎて雪降る前に花が咲くはず
試しにとポットに蒔いた種物が水やり忘れて萎れが見える
石拾いしてから作業の我がはたけ機械で起こすも畝作るのも
隣からエンジン音が聞こえ来て我も小屋からヤンマーを出す
作業終え家へ戻れば七時半 慌てて飯食い通勤支度
第2章へ進む
短歌の世界へ戻る