第9集 今が一番
第1章 今が一番
今が一番
他国住む娘に会いに8時間妻と二人で車走らす
気兼ねなく1泊2日の遠出する他国に娘居ればこそかな
最近は定番なりし居酒屋で親子三人晩飯を食う
仕送りや手間がかかりし吾子なれど親の楽しみ今が一番
冬の味覚
松江にて親子三人蟹三昧釜ゆで焼き蟹刺身まであり
隠岐アジの生き造りが付く盛り合わせ地酒も旨くて気分最高
三人の箸でつついたエコガレイ味と記憶がいつまでもあり
連作
連作はもっと自由であって良いなどと作品正当化する
簡潔でポイント抑えた表現は随筆よりも連作にあり
一瞬の気持ちを固定化する短歌芸術性より記録になりし
高度なる芸術的な短歌より誰もが作れる実用短歌
じじぐれ祭り
春なれば伝統美山に文化あり味見河内のじじぐれ祭り
新緑のブナで作りし柴みこし椿やコブシを神に見立てて
住吉の神社の石段静々と担がれ下る柴みこしかな
千年の月日を生きる古ケヤキ長き祭りの生き証人なり
境内にみこし見守る家族連れ街から戻りし孫息子たち
本年の縁起担ぎて奪い合う村を廻りしみこしの花を
林間にカラオケバンドが賑わいし年に一度の村祭り兼ね
鮮やかなかすりもんぺに身を包み河内音頭を踊りし老婆
満面の笑みで踊りし老婆見つ深き河内の生活想う
あちこちの庭先見ればバーベキュー息子迎えて白煙立てて
河内の赤かぶら
奥深き山切り開く焼畑で実りし河内の赤かぶらかな
落ちのびし平家伝えしかぶら種赤色ゆえに平家に好かれ
店頭で酢漬けなりたる赤かぶらコリコリしてて評判がいい
平地ではうまく育たぬ赤かぶら名前は売れど量産できず
美山蕎麦負けず劣らぬ赤カブラ美山売り込む貴重な素材か
山の運動会
山間に行進曲がこだまする今日は児童の運動会日
赤白に分れ行進する子供 手を振り足振り元気いっぱい
挨拶を終えて子供に目をやればどの子の瞳も輝いている
山の校児童の数が限られてすべての種目にほとんど参加
田植え時期多忙なはずの親たちが万難排してテントに集う
懐かしい運動会がそこにある時代は既に平成なれども
ババーズ
年寄りの劇団「ババーズ」元気にて福井どころか東京公演
ババーズは高齢社会の先導者歳はとれども「老い」を感じず
見る人の笑いを誘う名作は「三途の川の爺さん」なりし
劇団の活動裏に指導員退職あとに地域を生かす
ログハウス
端正な針葉樹林に囲まれて美山の村はログが似合いし
組合の丸太利用のログハウスカナダ産とは価格で勝負
森林とスローライフのこの美山ひとを癒やせる空間がある
退職し一人で住まうログ多くそれもひとつの美山の魅力
芦見の花まつり
ひまわりが訪ねる客を迎え出る山に囲まる芦見の村は
年一度村を挙げてのお祭りは「ひまわり」テーマの花まつりなり
余興にて街から呼んだ歌バンド昔なつかしフォークを歌う
元気よく子供の太鼓鳴り響くとなりの村の応援部隊
山間に黄色のTシャツよく似合うボランティアのスタッフ着たる
猛暑日の芦見の村の花まつり目にも耳にも記憶に残り
恐竜銀座
昭和には小型恐竜化石出る話題になるも発展ならず
河原から足跡化石見つかりし美山意外に恐竜銀座
勝山に負けぬ地層が横たわる開発しだいで観光資源
地酒黎明
名が縁で栽培されし「美山錦」美山の水とで美酒に変わりし
限定でなかなか飲めぬ「黎明」酒 美山愛する人にだけ売る
辛口で通に好かれしこのお酒 厳しき美山の自然に似たり
落人の村
敗れたる平家隠れる赤谷区 由来の地名が今でも残る
豪雪や大火事ありて村絶えし1軒のみで神社を守る
冬時期の赤谷開ける除雪車が谷を削って村へと向かう
落人の伝説ありし間戸の村「落盛」姓で納得がいく
美山の蕎麦
うるし塗る太い柱に囲炉裏ばた宮地そば食う美山の醍醐味
道場で腕前競う段審査 真の蕎麦打ち美山で育つ
固有の種南宮地の宝なり越前福井の宝物なり
そば祭り1万人の人を呼ぶ蕎麦は美山の起爆剤かな
伊自良の地
戦乱の時代に生きた伊自良氏が味見に文化花咲かせたり
中手の古社に納まる阿弥陀像当時の栄華を今に伝えし
専門の学芸員が田を掘れば古人住みたる町跡が出る
伊自良氏の面影既になくなりて堀りし温泉街人を呼ぶ
道ばたのもみじ卵の自販機が温泉帰りの客楽します
伊自良氏の館施設や農園が過疎の味見の希望をつなぐ
娘の里帰り
工事にて出入りができぬ大学にこれ幸いと娘帰省し
秋まではペーパー免許の吾が娘キューブを繰って一人で帰省
充電が目的なのか里帰り勉学道具全く持たずに
毎晩の娘つくりし夕御飯 思い深くて酒さえ飲めず
ちゃん付けで名前呼ばれて苦笑い2歳半なる孫の坊主に
前日はタイヤを買ってイタリアンひととき過ごす親子三人
ほのぼのと娘と過ごす8日間春の日差しに心が和む
3月の戻り寒波に大慌てタイヤ変えずに山陰もどる
母つくる餅つき機械の白餅を袋いっぱい持ち帰りたり
春近し
腰まで雪に閉さる芦見谷人も草木もじっと春待つ
淡雪で化粧終えたる杉林春の日差しを静かに待ちぬ
遠からぬ味見の春を待ちきれず雪の畑にスコップ入れる
目ざめれば耳に優しい春の雨深き美山の根雪を融かす
卒業式
紅白の幕をまといし白亜校根雪が残る山々に映え
エンジンを吹かして登る校の坂父兄の車が狭しと並ぶ
卒業が十一人の山の校体育館の広さ感じず
小さくもきちっと進む式典に普段の様子がまぶたに浮かぶ
緊張と寒さがゆえに震えきて証書受け取り戻りし児の手
児童には難しすぎる式辞でも還暦なる身に共感多し
出来すぎた大人作りし送辞さえ児童歌えば感動がある
先見えぬ時代を生きるこの児等に幸せなれよとエールを送る
雪塊
大雪塊駐車場に居すわりて車それぞれ避難生活
積み上げし雪塊いつしか固まりて春になれどもスコップ刺さらず
春先の手ごろな仕事に定着しスコップ片手の雪塊崩し
四月の異動
あれこれと人事のうわさ飛び交いて内示の日まで賑わい続く
はばからず机の整理に日をつぶす三月までの退職者かな
思いとは違う職場に肩落とす元気出せよと声も掛けれず
それほどに業務が減らぬこの職場再任用の数ばかり増え
新年の机の配置見事でも仕事の流れ軌道に乗らず
春の作業
うららかな季節なれども忙しく桜の花を横目で眺む
トラクター回す後からついてくる這い出す虫が目当てのカラス
長梯子ロープ使いて固定する命がけなり雨どい修理
恒例のビニールハウス組み立てはいつものように老父と二人
老父と共同作業の難しき無視も出来ぬがあてにもできず
ベテランの父がつくりし菜畑を習いはせぬが見本にしたり
何処打てどカチンと手元にはね返る穴掘り作業も容易に行かず
雪解けて開墾始めた我が畑固まりだらけで種まき遠し
お彼岸に試しに植えたジャガイモがひとつ二つと芽出すうれしさ
薪作り
お隣のクリとヒノキの枝もらい見よう見まねで薪に挑戦
電動の丸ノコ使って切り落とすスローライフも電気に頼り
手斧にて太目の枝を真っ二つこれぞ薪割りこれが醍醐味
二千円量販店の手斧でもここが主役と活躍したり
年休を半日使った薪作り身体動かしそれなりに良し
冬期間週末だけの薪燃やし二十束でも十分な数
またひとつスローライフを経験す今年の春はやること多し
今年の連休
薪割りは手斧で割るよりヨキが良しコツをつかめばパワーに勝る
この4月晴天続きで雨降らず畑の水遣りわが気をもます
お隣でレタス二玉頂きて畑の初心者励みになりぬ
無理するなツルハシ使った畑掘り疲れ溜まれば背骨が悲鳴
別宅へ手押し車を押して来る八十超えて母も弱りし
ツルハシとカキヤ使って角を取る昨秋造ったブロックなれど
別宅で一日過ごす連休日昨年まではありえぬ話
支所長
支所長に次長の役目が加わりて思ったよりも多忙な日々よ
待望の個室の椅子に座れども周り気になり落ち着かないぜ
関係が微妙にかわる職員に戸惑いよりも立場自覚し
本年は小さな施設の施設長ボスというより外交役よ
不満爆発
朝夕のうるさい食卓嫌になる定年間際の五十八歳
いやいやと食事を摂らぬ孫だけど話し通じぬ父も同じよ
年老いた介護手前の父母と孫の気ままに振り回される
順番の農家班長引き受けも会議や行事が毎週続く
連休をしっかりつぶす農作業長男とはいえなんで俺だけ
意見など聞きたくもなしこの歳で特に老いたる父の意見は
人生が嫌になるのも良く分かる定年間際の五十八歳
離されぬ古き車が並びたる維持費などは考えたくもなし
名車でも古くなっては戦ができぬエンジンカラカラ白煙も吐く
この歳で乗れる車は何になる地域や職場で限定される
第2章 はなまつりへ
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