左近長者物語ー第4場面 奈良の都にて


 第4場面 奈良の都にて

ナレーション
 再び、奈良の都です。越前の国から出てきた二人の女性は生江臣家道女とその母です。多くの法華経の写経を抱えています。今から東大寺に行って納めるようです。

家道女:東大寺はどこかなあ。都は広くて訳が分からんね。今まで書き溜めてきた法華経の写経を東大寺へ収めに行く日だ。お経を写すのに何年も掛かったが、良い勉強になった。やはり、仏の道には良いことが書いてあるなあ。

その母:そだねー。年老いた母には、奈良の都は遠いもんだ。早速東大寺のお坊さんに届けたいのだが。親戚の東人殿は東大寺に何かとお世話になっておるようじゃ。この写経を収めることで何かと力になれば、ありがたいけどね。

家道女:それでは、日の暮れぬうちに寺へ急ごう。

 暗転

ナレーション
 それから幾年月か流れました。家道女は熱心に仏教を学び、人に説くほどになりました。出家してお坊さんになった分けではありませんでしたが、道行く人にだれ彼となく声をかけ仏教を説いていました。

家道女:そこの人。あなたは仏様を信じますか。この世の中は悪いことばかりです。仏様を信じて、幸せになりましょう。

町行く人:わしにはよく分からん。わしらには田んぼとお天とう様があればそれで良んじゃ。それで、毎日毎日満足して暮らせればそれで十分じゃ。

家道女:これからまだまだ世の中が悪くなります。仏様を信じることが救いの道です。私と一緒に仏教を学びましょう。

お役人:そこの女、道行く人に何をしているのじゃ。都の平安を乱すのではないぞ。度が過ぎると、国へ返すことになるぞ。

家道女:そんなことはございません。私は、世の中のために、仏教をすすめているのです。お役人様もぜひ勉強してみませんか。

ナレーション
 家道女はいつしか「越の優婆夷」といわれるようになりました。優婆夷とは正式の出家していない女性の仏教者のことです。都で罪福を説いて民衆を惑わしたとして、その後、越前国へ戻されたとされています。






第5場面 東人の自宅にて

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