あぜみちの会の会誌「みち」ご購読希望の方は、
安実正嗣氏 〔TEL:(0776)54-7565〕までご連絡ください。


あぜみちの会ミニコミ紙

みち49
(2008.7.7 小暑号)


大野市 荒島岳



シグナル49

福井市 中川 清

 夏、緑の季節である。みどりは実取りでもある。夏が過ぎると稔の秋を迎える。その準備のみどりの季節だとも言える。

 この頃、バイオ燃料の影響もあってか、世界的に穀物が不足、価格高騰で、一部の国、地方で食に対する不安が報じられている。

 古来、わが国でも、不作の年には、買占めなどがあったりして、米騒動があったと、歴史は教えている豊作を祈願する祭礼が各地で行われている因でもある。品不足は、とかく人の心を不安に掻き立てる。価格高騰の報道が、その心理をさらに煽り立てる。 最近では、値上げ前のスタンドの車の行列があったし、以前は、トイレットペーパーを買う人の行列など、記憶に残っている。食物となると、更に深刻になる筈だ。食糧の価格が、異常に高騰して困っている国、人もいる反面、食糧輸出国は、思わぬ利益で潤っている。経済問題が絡むと、ますますややこしくなる。日本国内では、人の口にするものは、まだしも、家畜の餌は異常な高騰で、畜産を廃業する農家も出てきている。

 食べ物は、それを食べる生き物の、生き方をも変える。人からフード餌を与え続けられた猫は、鼠を捕らえていた頃とは、肥満などに変わってしまった。動物園の動物も、与えられた餌に釣られて、芸を覚える。食糧自給力の低い日本が、そうならないように願っています。

 食べ物の偽装に、昨年来は、振り回されましたが、みどりの季節、食糧生産の農業に、これから、目を、向ける一つのきっかけにしたいものです。コメ生産が経済的に問題があるのでしょうか。コメ生産のモデル基地と言われた秋田の八郎潟で米を辞める転作農地が、今年大幅に増えました。

国内各地には、耕作放棄農地も、増えています。世界で有数の自給率の低い国の、国民として、皆んなでじっくり考えたいものです。


 


    ごあいさつ
  
                  あぜみちの会会長    竹島 善夫

 北前会長は、筆まめで、人には優しい真面目な人で、面倒身のよい会長でした。私は、何一つ出来ない人間でございますけれど、皆様方、ご支援とご指導を賜りながら、自分の力のある限り、あぜみちの会の為に努力してまいりますのでよろしくお願い致します。   

 私、藤島エンタープライズを平成二年に設立し、五人で農作業をする事になりました。平成六年、七年、八年と一人減り、二人減り、農地は三十ヘクタール迄減少、後は、私一人となり地域の方とコミニケイションを取りながら、地域の農地を守る気持ちで皆様とご相談しながら農業に打ち込んできました。そのお陰で地域の方も協力していただける様になりました。今では稲作七十五ヘクタール、転作稲発酵飼料二十三ヘクタール、保全管理二~三ヘクタール耕作する様になりました。二十年前、目標としていた農地が確保できましたし、後継者も二十八歳~三十歳迄の方三名、事務員一名、私と家内を入れると六名となりました。それで作業を行っています。 

 県、市、農協職員のもとに、発酵飼料を作れる様になりました。稲発酵飼料も、酪農の方と話しながら提供し、販売も順調よく伸びています。

 来年二十一年には、藤島エンタープライズも皆様のお陰を持ちまして、二十周年を迎える事になります。
 又、二十周年記念を行ないたいと思いますので、その時は、皆様方にはよろしくお願い致します。

 これからの生産者は、地域の方とコミニケイションを取りながら農地を御守る気持で、生産者は生産に取り組むべきだと思います。





          食糧そして環境

                                       名津井 萬

 平成九年七月二十七日「おくえつ農業・農村フォーラム」の一千人集会に出席した時に一番最後に質問した。要旨は「何十年か後には、世界的な食料危機が来ると聞くが、今は全く、その危機感がない。世界と日本の食糧の繁がりはどうでしょうか。日本農業を立ち直すためには、個人的には早く食糧危機が来て欲しい」と、自嘲気味に質問した覚えがある。囲りの人も皆んな、自嘲気味に笑っていた。平成二十年、早くも世界は食糧危機に直面してしまった。自嘲気味に質問した事が、早くも到来してしまった。だが、日本は他人事の様で、少々、情けない「平和ボケ日本」である。

 私は昭和十年代から二十年代の少年の頃、米の供出割当があり、母は米作農家であるながら、我家の米の確保に四苦八苦していた。強権発動と云う言葉も耳にした。米の供出割当では、家族を多くかかえた家の、大の男が泣いた事も聞いた。警察が、米が隠してないか家宅捜査もあったと聞く。食糧不足は、人間の人格も変える事も知っている。
 戦後、国をあげて食糧増産に取り組んだ。米は国が統制し、米価を生産者に高く、消費者に安くと云う「逆鞘方式」で乗り切った。

 今、日本は米の増産に励み、世界の国へ食糧を、米と云う現物を送り援助すべきと思う。
 日本は世界の国々へ、何百、何千億の「金」を出すより、現物を出すべきと考える。金は生産者に支払うべしと思う。意見は色々と有ると思うが、基本的には「金は国内へ、現物は世界へ」である。日本は。

 冒頭に記した、私の質問に対して、現、県立大学長の祖田修先生(当時、京都大学農学部教授)が答えてくれた。「世界的に食糧危機は乗り越えられると思います。しかし、それは環境をいくら破壊してもいいのならばである。日本は将来的に、森林を大事にしながら自給率を上げるべき時代が来ると思います。」と答えられた。
 私の食糧問題と、祖田先生の環境問題、共に今、世界を直撃しようとしている。
 「一つの課題が解決すると、二つの課題が生れる」と云う言葉がある。その課題を一つ、一つ解決するのが進歩である。発展と思う。我々、人間は、それが出来る動物であると思う。
 最後に、平成九年の「おくえつ農業・農村フォーラム」の記録が「千人の喝采・農」(二百八十四頁)と題して残されている。読めば読むほど「今、生きている。輝いている。」





        菜園のすすめ

          
              酒井恵美子

  喫茶店の後ろにも私の菜園があります。以前から車から降りた客がよく立ち寄ってますが最近は声を掛ける客が多くなりました。第一声は「うまくやってるのォ」です。その内、作り方や植える時期とか何のかんのと話しかけてくるのです。
 また、隣の工場に働きに来ている中国の女の子達が工場の小さな空き地で野菜の種を蒔いている姿を見かけます。余った苗等、畑の隅に置いておくと何時の間にか持って行って植えたりもしているようです。私の周辺は半分都市化した近隣ですが、中庭とか小さな空き地に野菜を作り始めた人もよく見掛けるようになりました。他にも私の家に人の出入りが多くなりました。電話で済むような用件でもわざわざ足を運んで来るのです。お土産だのおすそ分けだの、ていねいな方は、多く作り過ぎたので・・・と調理済みのお惣菜を届けて下さいます。外仕事が多くて手の込んだ料理ができず、技も伴わない私には、有難く戴いていますが、足を運んで下さった人に気持ちばかりの野菜の一にぎりを手渡しするのがお目当ての方もいるような気も致します。いずれにせよ、食への関心が急速に高まっている気配を日々感じるようになりました。
 健康面では生活習慣病や糖尿病予備軍、メタポ等、気にする方が多くなり、食生活への関心が高まったのでしょう。それに中国のギョーザ問題もあり、食料の高騰等も手伝って家庭菜園を始める人が増えてきたように思えます。たいへん結構なことと思いますが、初めての方はなかなかたいへんなようです。
 今、思うことは、夏野菜の場合、気温が低い時に買ってきた苗を育てきれないケースがあります。大きくなるどころか買った時より小さくして、枯らしてしまうこともあります。安全で安心で新鮮でおいしい野菜が採れる筈だったのにと挫折して引き下がってしまう人もいます。次はよく勉強されている方です。園芸誌等丹念に読まれてマニアル通りに取り組んでいる方です。自信があるのでしょうか、先人に教えを乞うたり、出来のよい畑など見向きもしません。田舎のおばちゃんの話など耳を貸さないのですが、自然はそう甘くありません。頭の中だけで作物は先ず作れないことに行き当たります。まだあります。
 子供をいきなり大人にすることはできないのですが、そこがよく分からないのです。自然の成長を待てないのです。少しでも速くより多く、隣の畑に負けていられないと意気ごむのですが、作物は、ゆっくりとじっくりと育てるものです。そして引き際も心得なければなりません。100%の収穫を望むのは欲張りすぎです。いずれにしても、一朝一夕には何事もできないと思いますが、思い立って立ち上げた菜園ですから、持続させることが大切なのではないでしょうか。
 今や、世界中で食料問題が浮上している現在、菜園を大いに見直して下さい。
 地球上の生き物は全て自分の食べ物は自分で探します。人間だけ、他人に作らせて平然としているのは、いかがなものでしょう。
 地球規模で温暖化による食料生産の減少は避けられないでしょう。家庭生活内ではエネルギーは石油に頼らなくても何とかなる部分もあるでしょうし、自分の体を使えば生活習慣病だのメタポだの、いっぺんに解消します。そのためにも家庭菜園を大いに知恵をしぼって工夫して作物を作ることをお勧めしたいと思います。
 お金が無くても、豊かな暮らしができますよ。




       ヤギ通信
                    
土 保 裕 治  

 一日「日刊福井」が第一面の真ん中にやぎの赤ちゃんの写真を載せてくれました。ところが、お天気の良い、明るい時だったのが裏目に出て、黒い瞳が縮んでしまい、怖そうな白い目で、可愛さ半減。ちょっと残念でしたが、それでも数組の方々が見に来てくれました。また、その記事を見たFBC福井放送が六日午前十時四十五分頃から五分程度のラジオ取材に来ることになりました。
(番組名「元気一番」最後の部分のエコーメイト参上)映像なしでどうやって赤ちゃんやぎの可愛さを表現できるでしょうか。それとも、私がうまく表現しなければならないのでしょうか。やっぱり、ラジオよりテレビが取材に来て欲しかったなあというのが本心です。(二○○八年三月四日)
 今朝、福井放送ラジオ(エコーメイト)の啓ちゃんが取材にきました。映像なしでどうやって可愛さを表現できるかなと思っていたら、動物好きの彼女は、幼児言葉に「変身」して、やぎの赤ちゃんになったつもりで、紹介をしてくれました。包装前の打ち合わせにはなかったので、その意外さに私は横でずっと笑ってました。それも、ひと言だけ真似るのではなく、結構長い間幼児言葉でしゃべり続けたのです。さすがデチュ。こちらはお陰で、緊張するどころか、楽しく取材を受けることが出来ました。そして、ファンクラブの前田さんと出口さんが応援に来て下さって、にぎやかでした。にんなで、番組専用のはでな色の車の前で記念写真を撮ってもらいました。さーて、取材が済んだので、来週は恐ろしい除角をします。(二○○八年三月六日)
 十六日(日)八時から十時、足羽川清掃は多くの団体が参加する、大きなイベントになっています。私たちエコ・プランふくいも少人数ながら参加します。今回初めて親子にも草刈を手伝わせるつもりです。あまり役には立たないと思いますが、母「ちえぼ」とその赤ちゃんを予定しています。このとき初めて、外に連れ出します。担当場所は木田橋JR橋隣)南岸です。会いに来てくださいね。参加される方で、別の担当場所へやぎを連れて来て欲しい方は電話ください。対岸への出前参上しますよ。(二○○八年三月十四日)
 十六日に「ちえぼ」とその子の計二匹を連れて、まず、和田地区が担当の国道八号線沿いの堤防、そして再び車に乗せて、ロータリークラブ担当の中心地、路面電車が通る幸橋へ大きく移動、そして、次はNPOエコ・プランふくい担当の木田橋です。「何でここに『やぎ』がいるんだろう?」と『きつね』に包まれた多くの人が、作業を中断して寄って来てくれました。だから、して来たのは清掃の邪魔でした。でも、好評だったので、また来年も「お邪魔しまーす。」(二○○八年三月二十日)
 私達。環境NPOエコ・プランふくいは、昨夜、「市長と語ろう」という市役所の企画で、福井市の東村市長と座談会を持ちました。真面目な団体なので、堅苦しい話ばかりになることを心配した私は、皆んな緊張をほぐそうと、変わったこともやっていることを冒頭に紹介しました。「実は、やぎを飼っています。生ごみを食べるので、環境に良いです。市の償却場では油を掛けて生ごみを燃やしているので、CO2を沢山出していますが、生ごみを食べるやぎはCO2を削減します。」(ただし、やぎはCO2の代わりに、くさいガス(おなら)はよく出しますが。という冗談は言えませんでした。)市長は、やぎがいることは何度か耳に入っているそうです。嬉しいですね。ご存知とは。そうだ!今度、市長にもファンクラブにお誘いしようかな。市は補助金を出して、家庭用生ごみ処理機を普及させようとしたことがありますが、使い続けている人は少なく、失敗だったそうです。それじゃ、生ごみ処理機の代わりに、生ごみが足りないくらい沢山食べるやぎに補助金を出そうか、という言葉は、残念ながら、市長の口からは聞かれませんでした。もし、東国原市長だったら、全国でも珍しいユニークな決断をしてくれるかも知れないと、空想しながら、東村市長にやぎを勧めてみようと思った私は、真面目?不真面目。(二○○八年四月八日)
ようやく春になって来ました。冬に休止していた、「ヤギと里山」を再開しようと思います。山菜の季節なので、今回は「山菜を楽しむ」をテーマに、あそこの山の持ち主である、青木さんから山菜の見つけ方、食べ方、注意点、その他を教わりたいと思います。「こしあぶら」はどこにでもあり、しかも、てんぷらがおいしいそうです。参加ご希望の方はお知らせください。4月20日(日)午前10時~昼頃に行ないます。なお、場所などは18日にお知らせします。2008年4月14日
つちほです。4月20日(日)はお天気は良さそうなので、午前10時~昼頃に行ないます。なお、場所はいつものところですが、付近に霊園が完成し、すぐそばに駐車が出来るようになり便利です。さくら通りを東進し、高速をくぐって200m。岸田建設資材置き場と霊園の看板が目印です。「こしあぶら」などの山菜の見つけ方、食べ方、注意点などを教わる予定です。揚げたてのてんぷらが食べられると思うので、各自おにぎり、お茶飲み物など持参したらいかがでしょうか。敷物、手袋、あれば熊鈴、¥200程度の会費を集めることになるかも知れません。さて、今度、牧場の引越しをします。お手伝いして下さる方、お知らせください。日は未定です。2008年4月18日
いつも応援ありがとうございます。2月中頃に生まれた5匹の子やぎはそろそろ3ヶ月になります。この間には、首や足が母やぎのリードに絡まり、誰もいない牧場で気が付かず、命が危ないことがありました。いつも夜にしている1日1回のエサやりが、この日はたまたま、明るい時間に行なったため、早く発見できたようです。それでも、体が大きく、強引な「ちえぼ」の体力でグルグル巻にされたこどもの足は、解きほぐしてから40日もの間びっこが取れませんでした。連休後の今になってようやく回復し、やれやれです。5匹ともまだ母乳を飲んでいますが、親と同じように野菜や草を沢山食べて、すくすく成長しています。さて、5月18日(日)は和田地区が毎年やぎを呼んでくださる、れんげまつり「ワ(和)ンダ(田)-ランド」に連れて行きます。10時から14時に会いに来てくださいね。済生会病院 北隣の休耕田に、れんげが一面になっていて、のどかな風景です。やぎとゆっくり時間を過ごしてください。2008年5月11日
やぎファンクラブの皆様へ
お待たせしました。初めて「料理教室」を開くことになりました。これは、『やぎファンクラブへのおさそい』(申込書)にうたってあるもので、お待ちかねの方もかなりいらっしゃるようです。ヤギと牛、そしてブレンドした3種類のミルクでお菓子を作り、食べくらべしてみたいと考えています。実は、牛乳で作ったケーキにはちょっと物足りなさを感じていますが、ヤギミルクで作った方がコクがあって、牛乳のよりおいしいと思う物がいくつか見つかっています。このことから、お菓子を作ったり食べることに意欲的な皆様に『めえめえ』得意なケーキを試作してもらい、牛よりやぎが優れているという結論を引き出そうというねらいです。チーズケーキ、プリン、ゼリー、ヨーグルトケーキ、そのほか、果たして、期待通りになるか分りませんが、みんなで楽しもうと思います。
 これは誰も体験したことのない珍しい企画だと思います。だから、22日午後は空けておいて下さいね。なおファンクラブの会費とは別料金になります。未定ですが、大人(小学生以上)一人¥500を少し上回る位でしょう。ファンクラブ未加入の方も歓迎です。2008年6月4日
日曜日の昼下がり、そして、夕方。まったりとした一時を
~エコプランふくい10周年を記念して~
6月21日は夏至です。その翌日、22日に環境のことをちょっと考えながら楽しい時間をみんなですごそうと思います。出入り自由、気ままに、気軽に参加してみてください。ただし、集会室がいっぱいになると困りますので、定員をもうけます。予約してください。
日時:6月22日(日)15:30より
会場:県民生協ハーツ学園店 組合員集会室
福井市学園2丁目9番22号 tel.0776-22-0082
第1部(15:30~17:30) やぎのお話とやぎミルクのお菓子づくり
定員:30名
参加費:500円(小学生以上)
準備物:料理をする服装
エコプランの理事長がやぎを飼っています。「やぎファンクラブ」の皆さんといっしょに、やぎミルクを使ったお菓子作りをします。チーズケーキ プリン ゼリー ヨーグルトケーキ、そのほか ヤギと牛、そしてブレンドした3種類のミルクでお菓子を作り、食べ比べ。
第2部(17:30~19:30)廃油のキャンドルづくり
定員:30名
参加費:無料
準備物:ガラス容器(3個まで) 廃食油(1個あたり約50ml使用)※一度濾過したもの 未使用のもの 
不可色や香りを付けて作ったエコキャンドルはお持ち帰りができます。
終了後、暗くなったら、お店の駐車場で「キャンドル・アート」
キャンドルの明かりですてきな夜を楽しみます。
主催:エコプランふくい




                          蝸 牛 角 上
 
                                          福井市 細川嘉徳

 国際宇宙ステーションの日本実験棟(きぼう)が宇宙にある。地球から(きぼう)までの距離は僅か400kmつまり東京から京都までの距離しかないと言う。去る5月31日星出さんが、3月の土井さんに続いて二回目の実験室組み立て作業に入っている。打ち上げから40分で地球周回軌道に乗ったというのを聞くと宇宙は身近に感じる。
 一方昨年11月に打ち上げられた月探査機(かぐや)は、地球から3萬km彼方の月の周囲を回っている。これはけた違いに遠い。そして月を周回中の衛星「かぐや」がハイビジョンカメラで撮影した、月の地平線から見た「地球の入り」の画像を送って来たのを新聞で見た。地球が逆さまに月面に沈んで行く様子が手に取るように見える。写真は望遠レンズで写しているので、実際に人が月面で肉眼で見る地球の大きさはどれ位だろうかと夢見てしまう。
 「地球は青かった」今から40年近く前の、最初の宇宙飛行士ガガーリンの言った言葉だと思うが、それは神秘的で美しかっただろうと思う。と同時に宇宙から見る地球の小ささにも一種の感動が有ったのではないだろうか。今この小さな地球が大変なことになっている。地球の温暖化に加えて、人類史上嘗て無かった大事件が次々に起きている。南太平洋の大津波、北米のハリケーンやミャンマーのサイクロン、各地で起きる竜巻、そして5月、中国四川省大地震で多くの人が崩れた瓦礫の下になっているのに、未だ救助の手がなかなか届かない。そんな中でも世界各地で紛争が絶えず、人々は争うことを止めようとしない。
 この事をあざけるように中国の詩人白居易は次の詩を遺している。

対 酒     酒に対す

蝸 牛 角 上 何 事 争    蝸牛(かぎゅう)角上何事をか争う

石 火 光 中 寄 此 身    石火 光中 此の身を寄す

随 富 随 貧 旦 歓 楽    富に随い 貧に随い 旦(しばら)く歓楽せよ

口 開 不 笑 是 痴 人    口を開いて 笑わざるは 是れ痴人(ちじん)

蝸牛はカタツムリのこと。「蝸牛角上の争い」つまらない争いという故事(昔から言い伝えられてきて、世間に知られている事柄)を詩にしたものである。意味は次のようなもの。世の中の人はカタツムリの角の上の小さく狭い処で、一体何を争おうとしているのか。火打ち石の火が発してすぐ消えてしまう、その一瞬の間に人はこの世に生きているようなものだ。だから、金持ちは金持ちなりに、貧乏人は貧乏人なりに、分に応じてまあまあ暫く楽しむべきである。大きな口を開いて笑わないやつは馬鹿者だよ。
宇宙誕生から今日までの時間に比べれば、人の生きる時間は、火打ち石の火が発してすぐ消えてしまう一瞬の間でしかないと言うのに。あくせくして一生を過ごす人の愚かさを詠っているように思える。


21世紀はまさに宇宙時代。日本の宇宙実験棟(きぼう)が完成すると、地上では出来ない実験が出来ることでその成果が期待されるし、月探査機(かぐや)の活躍も同様に期待されている。どちらも人類に明るい夢をもたらしてくれることを願って止まない。さて月夜に帰っていった「かぐや姫」は今何処にいるのだろうか。




   近代化によってもたらされたもの、失われたもの
    主に農林業の視点から

                                玉井道敏


 ◆バイオリニスト メニューインの言葉(1987年)

あわせてもう一点、ある学者によれば江戸時代(1603年~1867年)に培われた日本人の勤勉性が、1868年明治維新から始まった近代化へのあゆみを支え、加速し、今日の近代的国家を作り上げたといわれています。この学者はその勤勉性の獲得を産業革命になぞらえて『勤勉革命』と名づけています。
しかし日本人の持つこの二つの特性、器用さと勤勉性は近年、失われつつあるのではないでしょうか。今でもところどころで、日本人のこの特性は姿をあらわすのですが、総じて退化しているのではないか、と思われます。
アジア工場における世界的な日本の時計メーカーのデータでは、生産効率(能力)は、かつてはアジア工場が日本国内の70%であったのが、最近はアジア工場のほうが1.2倍
から2倍を示しているそうです。それだけ日本人の能力は低下したといえます。

ところで、子ども達に目をやると、日本の子供達ほど目の輝きのない子供はいないそうです。確かに、ここ2~3年の間に出かけたスリランカやカンボジアの子供たちを見ても、驚くほど貧しい生活環境にあったが、その顔の表情は生き生きとしていて、笑顔が素晴らしく、ひとなつっこいのです。これらの国に一緒に行った友人が発行した写真集をまわしますので見てください。子供達だけでなしに働く女性達の表情や姿は何ともたくましいのが印象的です。

10年程前に私の次女(当時高校生)が一年間タイに留学したのですが、彼女が日本に帰国して一番初めに感じたのは、日本人の顔の無表情さ、だったそうです。最近の日本人は子供も大人も表情に乏しい、この原因はいったいなんでしょうか。『衣食足りて礼節を知る』という諺がありますが、近年の現象は『衣食足りて無気力となる、無表情となる』とでもいいましょうか。

それと、もう一つ、戸外で遊ぶ子供の姿がほとんど見られないのも最近の日本のこどもたちの特色だそうです。田んぼに生きものの姿が希薄である。戸外で遊ぶ子供達の姿が見られない。自動車がやたらと走り、道路などの空間を占拠している。人々は無表情である。これらの現象は日本の今の姿を映し出しているのですが、社会の無機化と光景がなんとなく感じられます。社会の動きは弱者に如実に現れます。

それでは、日本人は昔からこのような姿だったのか、それを否定する面白い本があります。渡辺京二氏の『逝きし世の面影』です。幕末から明治のはじめにかけて日本にやってきた欧米人が書き残した日本、及び日本人の印象記をとりまとめたものです。その多くが、日本の自然の美しさや、好奇心にみち、親切で礼儀正しい日本人について書き残している。また、子ども天国といってよいほど日本社会が子供を大事にする様子を描いています。

ただ、渡辺京二氏は多くの外国人が見たこの時代の好ましい日本の文明はその後の近代化によって滅亡した、と言い切っているのです。江戸文明をすてて、日本は若返りその延長線上に今日の日本があるということです。現時の日本の姿を皆さんをはじめ来日した外国の人達はどのように見ているのでしょうか。
近代化を突っ走ってきた結果が、現在の日本の姿であり、今も、より効率化を求め競争をあおる方向で社会は進んでいるように思われるのですが、それで、子供達の目の輝きを取り戻せる事ができるのでしょうか、私は疑問に思います。


◆山村とダムと水害

この7月中旬、10日間あまり雨が降り続き、その累積の雨量は500ミリに達しました。一部で被害もでましたが、足羽川が決壊した一昨年の水害までには至りませんでした。ごく最近、その足羽川の上流にある池田町の町長が、40年間、作る、作らないでもめてきたダムの建設計画を、下流の水害対策としてとうとう受け入れ、ダムの建設が決まりました。総工事費は一千億円と見積もられています。

皆さんもあす行かれる予定の旧美山町をよくみて来てください。一昨年の水害の復旧工事があちこちでなされています。このような工事は一般に公共事業といわれていますが、これという産業がない地域にとっては、この公共事業にともなう土木事業が地域の経済にとって大きな役割を担っています。雇用の拡大やお金を地元に持ってくる上でも土木事業が大きな産業となっています。池田町のダム建設も今後町にとって大きな産業の一つとなるでしょう。ただ、考えようになっては、地域とそこに生活する人々を一体的に捕らえると、土木事業は自分の体を改造しているようなもので、いつまでも改造し続けると、自らの体を破壊する危険性もあるわけで、その見極めや限界を踏まえることが重要だと思います。

最近、長野県の田中知事や、ごく最近当選されたお隣の滋賀県の嘉田知事などのように、公共事業に反対、また慎重な知事さんも出始めました。公共事業をやらずにどのようにして県民の生活レベルを上げていくか、その手腕に注目していきたいものです。福井県では原発の新設や今回のダム建設の容認、新幹線の誘致なども含めて、開発志向の公共事業路線継続しているといえます。

ここで、山の杉林について少し触れてみたいと思います。明日行かれる旧美山町は美林で有名なところですが、日本の国土の70%は山が占めています。それもごらんのとおり、緑が一杯の山です。都市化が進んでいる中で、これだけ緑の多い国も少ないのではないかと思われます。
1970年代から80年代にかけてスギを中心とする植林運動が盛んにすすめられました。ところが外材の輸入などにより国内の木材の需要が減少し植林した山林の経済的な活用が困難な状態になっています。枝打ちや間伐などの手入れが不十分で放任され、見た目には緑一色なのですが内部では荒れた山林もかなり見られるようです。また今冬の大雪によって地域によってはかなりスギが折れ、被害が出ました。

京都の林業家の友人の言によると、スギは植えてから20年ぐらいになると林地崩壊を起こす危険があるそうです。植林する前に伐採した木の根が腐り、スギの根が土をつかむ前に林地が崩壊する可能性が大きくなるそうです。二年前の福井の豪雨では、かなりの木材が流れてきて、橋桁などに引っかかったそうですが、20~30年前のスギの植林と急激な降雨による土砂の崩壊との因果関係があるのかもしれません。人間が自然を管理するためにその環境を単純化してきた時、そこに何かの大きな力が加わった場合、バランスが崩れて崩壊がおきるのかもしれません。自然を改造する時には特にその結果を慎重に予測してから行なうべきです。先祖や自分達が住み続けてきた環境をいつまで改造し続けられるのか、慎重に考えるべきだと思います。




  遺歌       小林年を

のべし夜具に羽虫動かず止りいて啓ちつの夜を雪降り出づる

早春の陽差しに干せし濯ぎ物胸に抱けばほのあたたかさ

西山の傾斜(なだり)のはだれ輝よいて啼き上りゆく雲雀の声す

体調は戻りしならむ正信偈誦す声太し夫の命日

玻璃窓の高きに白む空のなか風渡るらし杉の秀ゆるる

うすれゆく茜の空に黒々とビルは影絵(シルエット)となりて鎮もる

亡き夫の旅の土産の小銭入れふちすり切れど護符の如く持つ

思出は限りもあらず面影は選りゆく遺歌に生き生きと顕(タ)つ

  

    孫のファッション(三高)  北風 尚子

光ある空をぬき出すひとところ 芽吹くけや木の梢がけぶる

夕光(かげ)を受けし樹の影寂かなり シクラメン咲く窓辺明るし

雪降りて庭のひと隅黄なる色 下向きに咲くろう梅の花

つるされしベコニアの花見事なり 友とふれ見るなばなの里に

孫達の雪の投げ合い見ているに 時に小玉も我に飛び来る

手作りの高三最後のファッション ドレス姿に目頭うるむ

高三の自作自演のファッションに 友は手を上げ声かけくれる


        

 
麦の秋   鉾 俳句会

青銀杏御堂に新(さら)の赤瓦        田中 芳実

茄子の苗植ゑて3日目花開く   岩端 幸雄

ボランティアに精出す妻にメロン買ふ   宇野 一巳

自動巻時には狂ふ時計草   菅沼 洋子

山法師御堂に五色幕を張る   月 輪 満

紅白の斑入(ふい)り椿にお礼肥   寺前 孝子

流行を見るクランケの夏衣   林 多津子

トンネルを隔て卯の花今盛り   松村 伊久江

脱ぎし衣を畑の蕃茄の棒に掛く        森本 絹子

巣燕の気配を覗く日課かな   山川 浪江

菖蒲湯に泳ぐ一掻きして終る   吉田 早苗

山車を曳く漢揃いの足袋裸足   渡邊 和子


宮ノ下コスモス句会

からすの目トマト色づく日を待てり       久津見風牛

吹く風のなすがままなり青田波         時澤 藍

新緑や曲がり真直ぐ田植列           清水 清

清楚なる菖蒲にそっと身を添わす        田中れい子

朝涼やパンの匂ひの入るる窓          久津見いく代

麦わらの焼かれし田より風生まる        豊岡 悌子


馬来田寿子

本山の貫首の訃報山眠る

ジョギングの見慣れし山の朝かすみ

町中の一枚の田に冬の鳥

雛仕舞ふ母娘の顔の優しかり

耳慣れぬ小鳥賑やか日脚伸ぶ

大試験終りて家族旅に出る

大御輿薫風の中還幸す






アフリカから20人の青年がやってくる

 この4月、あぜみちの会事務局に「JICAアフリカ青年の農業・農村開発研修を受け入れてくれないか」との話があり、面白そうなので、スタッフで協議の上、あぜみちの会として受け入れる事になりました。ただ、あぜみちの会は任意団体なので、研修の総合窓口は『コラボNPOふくい』にお願いし、研修の実質的な企画と実施はあぜみちの会が担当する事になりました。研修時期は、福井の稲作を知ってもらう事で、あえて稲の刈り取り時期に設定しましたが、会員の農家の皆様には現地視察、研修の受け入れなどについて特段のご協力を賜りますよう、よろしくお願いいたします。
 受講者 アフリカ8カ国(エチオピア、ウガンダ、ケニア、タンザニア、マラウイ、モザンビーク、ジンバブエ、ガンビア)青年20人
     農業、農村開発に従事する行政官、普及員および農民団体・NGO職員など
 日程  8月22日(金)~9月3日(水)
 宿泊  ホテルエコノ福井駅前
 研修日程表(案)
  8月22日(金) 開講式、オリエンテーリング(県民活動センター)
    23日(土) 現地視察・実習 田んぼの天使(越前町八田)、山崎農園(越前市織田)
    24日(日) 自主研修 池田町、地元農家と交流(ファームハウスコムニタ)
    25日(月) 講義『日本農業の近代化と課題』(冠荘)
          現地研修・視察 池田町における農業・農村振興の取り組み
    26日(火) 講義『福井県農業の実態と動向』(県民活動センター)
          現地視察・研修 アジチファーム(福井市黒丸)、藤島エンタープラ
イズ(福井市海老助町)
    27日(水) 講義『農協組織の取り組み』(県民活動センター)
          現地研修・視察 農協所有大型乾燥調製施設の稼動状況
          〃      集落農業の取り組み
    28日(木) 現地視察・研修 大門市(勝山市平泉寺)、サトイモ栽培(大野市森山)
          〃      ファームビレッジさんさん、見谷ナーセリー(福井市新保)
    29日(金) 講義『農業普及指導員の制度と役割』(県民活動センター) 
          現地研修 研修生と普及指導員の意見交換(三国町水居)
          現地視察 畑作地帯での普及活動(坂井北部丘陵地帯)
    30日(土) 自主研修 
    31日(日) 自主研修 おさごえ民家園~松島水族館
  9月 1日(月) 現地研修 福井県農業試験場(福井市寮町)
          現地視察 鳴鹿大堰(永平寺町法定家)
    2日(火) 講義『福井県内土地改良の実態と課題』(県民活動センター)
    3日(水) レポート発表会、評価会、閉講式、交流会    



 ・・・執筆者一覧・・・

松田宗一・大野市矢
 勝山市のソバ屋『八助』、玉井よろず道楽研究所、越前市金剛院、あわら市正賢寺、
3月以来ブータン写真展が続きます。

中川清・福井市中荒井
 何かあると意見を聞きたくなる人、人との交流を大事にする人、益々多忙です。

竹島善夫・福井市海老助町
 県内における農業生産法人の草分、藤島エンタープライズを率いて20年、あぜみちの会の新会長でもあります。

名津井萬・福井市地蔵堂
 飼料高騰などによる畜産危機をいかに乗り切るか、県内酪農界の先達としてその動きが注目されます。

酒井恵美子・福井市高木中央

 体験に裏付けられた主張は説得力があります。何事にも予断を許さない批評家でもあります。

土保裕治・福井市宝永

 山羊の飼育と環境問題に入れ込む万年青年、子供たちと接する時の笑顔が抜群です。

細川嘉徳・福井市新田塚町

 4月、アネモネ祭りの会場に遠路にもかかわらず自転車で颯爽と登場、おいくつ?

玉井道敏・福井市南四ツ居

知らない土地へ行く、知らない人と交流する、本や映画から初めての発想や知らない知識と出会う、生きていくことは無限です。

 小林としを・福井市網戸瀬
  今は亡き連れ合いへの想いがひしひしと伝わってきます。

 北風尚子・あわら市田中中
  草木に感じ、孫の成長に目を細める姿が彷彿とされます。

 鉾俳句会(代表田中芳実・福井市布施田町)
  “さつき”から“みなづき”へ、爽やかさとみずみずしさを詠む。

 馬来田寿子・福井市足羽
  足羽神社にどっしりと腰を据えて切り取った情景の数々、雰囲気が伝わります。

 宮ノ下コスモス俳句会・福井市宮ノ下地区
  「コスモスでむらおこし」の先進地からの投稿、これからも“農”による発信を期待します。 





   編集後記

                          

今年はどちらかというと空梅雨気味、毎年毎年の天気模様はかなりの変動があるのですが、長い期間だと平均化されるのかもしれません。
竹島さんも触れておられますが、20年にわたる農業生産法人藤島エンタープライズの動きは波乱万丈、設立時に少しだけ現役として関わった経験からも、よくぞ今があるなという感を持ちます。そして淡々と経営展開の苦労を語る竹島社長の表情からはなんともいえない自信がみなぎっています。  
ブータンだけでなく、アジアの天まで耕すような棚田を見ると、長期にわたる人間の営為の凄さを感ずるのですが、最近世界で頻発する自然災害を見ていると、どれほど歴史があろうとその崩壊は一瞬の出来事にすぎない、という感が否めません。
多くのものを他に依存する体制が強まれば強まるほど、自立性はどんどん低下する。そして何らかの事情で依存が不可能となった時、存在そのものが危うくなる存立の危機に見舞われる。そういう意味でも、国としてみた場合の日本の食糧、エネルギーの依存体制は極めて危険なレベルに達しているのではないか。また国民一人一人としてみた場合、その生活基盤はかなり揺らいできているのではないか。そんな不安感を強く感ずるこの頃です。
校正時に気になるのは、短歌や俳句の世界で時々見られる難しい漢字の使用による言葉づかいや独特の言い回しです。あえてこんな言い方をする必要性があるのか、その世界を知らない素人の素朴な疑問です。

        (玉井道敏

 


このホームページに関するご意見、ご感想をお聞かせ下さい。 m-yamada@mitene.or.jp

[ホームページ] [あぜみちの会]