1999年8月20日に第1刷が発行された。
1996年7月21日、カムチャッカに旅立つ前日に脱稿した本。
「森の旅人」の著者、ジェーン・グドールに会いにアフリカに出かけた日々を記録したもの。
扉の言葉が印象的だった。
「私たちはある共通する一点で同じ土俵に立っている。
それはたった一度の人生をよりよく生きたいという願いなのだ。
そう思った時、異国の人々の風景と自分が初めて重なり合う。」
「人が旅をして、新しい土地の風景を自分のものにするためには、誰かが介在する必要があるのではないだろうか。どれだけ多くの国に出かけても、地球を何周しようと、それだけでは私たちは世界の広さを感じることはできない。いやそれどころか、さまざまな土地を訪れ、速く動けば動くほど、かつて無限の広がりを持っていた世界が有限なものになってゆく。誰かと出会い、その人間を好きになった時、風景は初めて広がりと深さを持つのかもしれない。」
それは世界という広がりだけではなく、どんな場所にも当てはまるのではないだろうか。日本国内でも同じ県内でも、歴史上の人物・友人・知人と人を知ることでその人を好きになり、その人の住む場所が特別な場所になっていくような気がする。それが1本の木であっても1匹のうさぎであっても・・・。
ジェーン・グドールもまた生まれ故郷のイギリスから、アフリカのタンザニアへ移り、チンパンジーの研究に一生を捧げた生活を送っている。生まれた所を遠く離れてそこで生きていくとこの意味をジェーンの著作から同じ思いを星野さんは感じ取る。
「現在のマイナスの状況さえも次の新しい時代を獲得するための通らなければならない道かもしれないのだ。幸福を模索すひとりの人間の一生が、一本のレールの上をできる限り速く走ることではないように、民族や人間の行方もまたさまざまな嵐と出会いながら舵をとってゆく終わりのない航海のようなものではないだろうか。」
多発テロ事件も、嵐のひとつなのだろうか?今はまだわからない。
わかっているのは、二度とこのようなことが起こってはならないということ・・・・。
「人と人が出会うということは、限りない不思議さを秘めている。あの時あの人に出会わなかったら、と人生をさかのぼってゆけば、合わせ鏡に写った自分の姿を見るように、限りない無数の偶然が続いてゆくだけである。が、その偶然を一笑に付するか、何か意味を見いだすかで、世界は大きく違って見えてくる。」
目に見えない大きな力が働いている、そんな謙虚な心を持って日々を誠実に生きていきたいと改めて思う。
2001.9.15