足りない!?日本のデッキ情報 
 
 

 今回はマジックのデッキ情報の第2回として日本のマジックが情報不足と言われる背景というお話を書いてみます。

 今回のエッセイと前回のエッセイ(デッキ情報と料理番組)は、実はそのテーマの前提がかなり矛盾してる気がします。前回のエッセイは、言ってしまうと「日本のマジックは情報過多になってて、その中には不要な情報も少なくない。そして本来はそういう情報を必要としない、あるいは見ることで不利益を被る人達までがその情報にさらされてる。」というお話でした。でもその反面日本の競技マジックでは「いや、日本のマジックにはむしろ情報が足りないんだ。」というご意見も少なからず聞かれるようです。そしてその後に続くのは「だから日本のマジックは世界が獲れない。」というご意見です。実際に世界選手権やプロツアーで日本人デュエリストが結果を出せない。その大きな要因の1つにこの情報不足が挙げられてます。

 そういう様子をよく観察してみると、この情報不足を訴えられる方々にはある共通点が見られる気がします。それは「マジックのデッキ、特に競技マジックのデッキは欧米で作られる物だ。」という認識を持っていらっしゃるということです。だから欧米に比べて日本にはデッキ情報が不足してる。よくよく考えてみれば当たり前ですよね。だってマジックのデッキが欧米でしか生み出されないとすれば、どう頑張ってもその情報が日本に届くのは後になります。ましてや世界選手権やプロツアーといった大舞台に実戦投入するデッキなんて、その大会の前にインターネットで情報が公開されるはずがないです。世界選手権で初めて対戦したデッキに負けて、その理由を情報不足の一言で片づけちゃう。それって私から見るとプレイヤーの怠慢でしかない気もするんです。だって少なくとも欧米のデュエリスト達は、それこそ日本を始めとする他の地域のデュエリスト達がビックリするようなデッキを常に第一線に送り続けてるんですから。(ただし今年の世界選手権は、そういう意外性があまりないちょっと残念な結果になったようですけど。)

 そこで私には素直な疑問があります。それは「なぜ欧米のデュエリストにできることが日本のデュエリストにできないんだろう?」ということです。この答えとして過去にマジック関連のWebサイトなどでも様々なご意見が出てると思います。ただ最近あるサイトで見つけて私がハッとした見解があります。それは「結局日本は未だにマジック後進国なんだ。」というものです。実際にはここまで単刀直入に言ってるわけじゃなかったんですけど、そのコラムをちゃんと読めばそういう内容は誰にでも読み取れるようになってました。多分このご意見はほとんどの日本人競技マジックプレイヤーのみなさんが認めたくないだろうし、到底受け入れられるものでもないでしょう。だからこの方も表現をぼかして書かれたんだろうと思います。でも日本語版発売から6年が経ち、日本国内で世界選手権や幾度かのプロツアーが開催されるような状況になっても、日本人デュエリストがそういう大舞台で結果を出せない。そして日本の競技マジックが未だに慢性的な情報不足、もっと正確に言うと本当に競技マジックのレベルを向上させるのに必要な情報が日本国内からほとんど発信されないという状況になってる。そういう現実と向き合ったときに、私達はそろそろこのご意見を真摯に受け入れざるを得ないんじゃないでしょうか。

 でも多分実際には、みなさんはこのご意見を認めるのが嫌で様々な反証を考えられると思います。例えば「じゃあそういう後進国でなぜプロツアー本戦や世界選手権が開催されるのか?」といったご意見です。でもそれについては過去に書かれたあいせん君のエッセイなどが1つの回答になってるかと思います。日本はウィザーズにとって大きな市場である。しかしそれ以上の存在ではないし、それ以上の重みも感じてない。そういうことなんだと思います。だから競技マジックのイベントは盛んに開かれるけど、それ以外のサポートはほとんどない。そしてウィザーズは「日本人デュエリストはそういう販促にも満足して今後もマジックを遊び続けるに違いない。だって今までがそうだったから。」そう考えてるんじゃないでしょうか。つまりそういう意味でも日本はマジック後進国なんじゃないか。私はそう感じてます。ウィザーズに対して意見も言えなければ、自分達で独創的なデッキを世界に送り出すこともできない。これではいつまで経ってもマジックという遊びの中での日本の地位って向上しないですよね。

 でもそもそも日本人デュエリストって、最初から自分で全くデッキを作らなかったんでしょうか。そんなことはないですよね。もしそうだったとしたら、日本でマジックがこれだけ広まって遊ばれるはずがないです。マジックという遊びの中に占めるデッキ構築の面白さってかなりの部分があると思います。そういう楽しみの部分を最初から外注(=会社・工場などで、自分の所でまかなえない品物や仕事を、よそへ発注すること。)に出しちゃうような遊び方で、デュエリストがマジックを面白いと感じることはなかっただろうと思うんです。しかし最近はそうなってなくて、特に競技プレイヤーの多くが自分のデッキを欧米の情報に依存してる。しかもそういうマジックへの取り組みを競技プレイヤー以外のデュエリストまでが「これで勝てるぜ!」とか思い込んで真似してる。これって見方を変えると「既に日本のデュエリストにとってマジックは『勝つことがすべて』の遊びになってしまってる。」とも見て取れる気がします。でもそういう遊びがどういう末路をたどるか…改めて書く必要はないですよね。

 これは以前にあいせん君も書いてた気がするんですが、日本のマジックを盛り上げるために個人ができることって、案外自分でデッキを作るといった単純なことなんじゃないか、そんな気がします。自分でデッキが作れれば、例えば初心者がデッキのことで悩んでいるときに適切なアドバイスをしてあげられます。でも最近はデッキ診断と称して初心者のデッキとどこかの大会で優勝したデッキとの差分しか思いつかないデュエリストが少なくない気がします。かなり以前にある雑誌に載ったデッキ診断で、受診者のデッキが診断前と診断後で跡形もなく変えられちゃったという記事を読んだ記憶があります。確かオリジナルのデッキから継承されたカードって数枚のダメージ呪文くらいだったんじゃないかな。あいせん君は「こんな“自分でデッキを作ってない人”にデッキ診断をさせる企画そのものが間違ってる。」とか言ってましたが。あ、これ私が言ったんじゃないですからね。

 多分この日本人デュエリストがデッキを発想できないという問題は、この後半年とか1年で解決できるような簡単な問題ではない気がします。ましてやこの期に及んでも日本の競技マジック関係者が情報に依存したデッキ構築を推奨し続けるとすれば、今後状況が更に悪くなる恐れすらあります。日本のマジックが今後どうなるかは、多分それでも自分でデッキを作るデュエリストがどの位日本に現れるかにかかってる気がします。ちょうどホビージャパンが売ってる日本語版が、同じ会社が出版してるGAMEぎゃざが推奨する競技指向にあえて逆らったデュエリスト達によって買われ、その市場を維持してるのと同じ気がしますね。

 という事で、次回のテーマは情報とのより良いお付き合いの仕方にしたいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。

     

メールは こちら までお願いします。
またご意見などは Message Board でも受け付けています。