恐怖支配が長続きした試しはない( 2003.12.20 )
 なんでも日経連が“賃下げ”も視野に入れた厳しい態度で来年の春闘に臨むんだそうです。日本の企業でも多くが年功序列を廃止して、出来高や成績重視の給与体系に移行しつつあります。しかし日本ではそういった仕組みが主に“人件費の削減”を目的に導入されています。自らが人件費という出費を減らす事で日本経済の規模を縮小しておいて、一方で社員の営業成績拡大を口にしたり日本全体の景気回復を期待する。さすがに私個人としては「あなた経営者のくせに経済分かってませんね?」とか言いたくなります。 (^^; しかも世のサラリーマンは携帯電話などの普及で支出は確実に増えています。これじゃあ日本国内の消費が冷え込むのはある意味当然かな、と素人なりに思っちゃうのですが。

 過去の日本の給与体系、もっと言ってしまうと“社員への報償”の仕組みが、安定的な企業の成長を大前提に構築された経緯はあるだろうと思います。その前提が見事に崩れ去った今、その副産物である賃金体系についても時代に合わせた物にしなければいけない。そういう理屈はまあ分からないことはないんですよ。ただ問題はそのやり方でしょうね。まあここに来ている多くの人達が未だサラリーマン経験を持たない方かも知れないので、別の言い方をしましょうか。「優勝賞金が2万ドルもらえる事を励みに Magic を頑張ってきて、ある日意を決して日本選手権に出場したら『今年から優勝賞金は1万ドルになりました。(もちろん賞金総額も減額ね。)』と言われた。」という感じです。確かに市場規模や実状を鑑みればその措置には妥当性があるのかも知れません。でもそれを励みに頑張ってきた側から見れば、そんなの半ば詐欺ですよね。それで主催者側は参加者が更なるモティベイションを高めて、その世界を盛り上げてくれると本気で思っているのでしょうか。まあ恐らく得られる結果は逆でしょう。

 これは私自身のサラリーマン時代に聞いた話なのですが、部下に持たせる目標というのは“その時点でその人が実現可能なレベルよりもちょっと上”に設定してやるといいんだそうです。ところが企業とか組織は自分自身の目標達成が何よりも最優先になるため、単純にその目標値の頭割りを個人に押し付けてしまうのです。例えば今現在バーベルを100kg持ち上げられる人が「今月中に110kgを持ち上げたらご褒美をあげよう。」と言われれば頑張ろうという気にもなるでしょう。でも「あ、今月のノルマは200kgなので宜しく。」とか言われたら最初から投げちゃいますって。実はその個人には潜在的に250kgのバーベルを持ち上げる能力があったとしても、それに開眼する前に投げちゃうのです。まあ昨今はそんな生ぬるい事なんか言っちゃいられない位世間は厳しい訳ですが、でもそういう形で人を育てていかないと最終的にその企業や組織は勝ち組にはなれないのです。

 企業にしろゲームにしろ、結局のところ最も大事な財産は“人”なんです。しかし実際には“人”を大事にしていない組織の何と多いことか・・・という感じです。ただしそんな組織のやる事はまあ十中八九うまく行っちゃいませんけどね。社員を育てない企業、新人を育てないプロ野球球団、そして販売店やスタッフを育てないゲームのメーカーや代理店。まあ揃いも揃って見事に轟沈してますから(笑・・・えない)。誰だって実現困難な重いノルマを常に課せられて尻をひっぱたかれるより、ちょっと頑張れば実現可能な目標を常に持ってそれを達成し続ける方が気分がいいに決まっているのです。そんな基本的な事を分かっていない&実践できない組織が増えているから物が売れない。人気が出ない。そして落ち目になる。そんなに難しい理屈じゃないと私は思うのですが。




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