昔から Magic には「初心者相手にフルパーミッションは使わない方がいい。」という、まあ一種の暗黙の了解みたいな物があります。ある初心者が自分が持っているカードから苦心してデッキを作ってデュエルルームにやって来た。ところが対戦相手はフルパーミッションで、唱えた呪文は軒並みカウンターされて結局何もできなかった。これじゃあデュエルがつまらなくて当たり前で、 Magic に定着してくれるはずだった人ですら Magic を離れる。そういう配慮から一部のデュエリストの間ではそういう意識みたいな物が生まれたようです。当然この手の意見には異論があって当然なのですが、かといって、じゃあ初心者相手に中・上級者がカウンター満載のデッキで戦って、それで Magic の楽しさみたいな物を対戦相手に伝える手段があるかと言うと、相当な方が答えに窮するのではないでしょうか。ただしそういう話は例えばバーンやウィニーにも言われていますし、何よりも自分がどんなデッキを使っても自由、それは間違いなく正解なのです。 最近の Magic では、いわゆるコントロール系のデッキが主流になりつつあるように私は感じています。実はこのコントロール系のデッキも、私に言わせるとかなり初心者にとっては嫌というか、戦って面白くない相手だと思われます。対戦相手に思い通りの行動をさせないという点では、それこそフルパーミッションと発想は何ら変わらないと思われますし。そしてそういうデッキが Magic の主流というか日常当たり前のように使われるデッキになるとすると、これで Magic 初心者が果たして Magic に定着できるのだろうか・・・という疑問も私にはあります。実際日本国内で Magic はご存知の通りの衰退振りです。ですから少なくとも、そういう現状を「これでいいんだ!」と肯定する理由はどこにもないはずです。
実は少し前に Type-I で Ivory Tower(AQ/RV-4E) の制限が解除されたことにかなりの異論が出ました。実際に福井での Type-I イベントにおいても、これの影響でかなり(無駄に)長いデュエルが発生して、対戦の盛り上がりがかなり失われるような場面が少なからず見られました。そもそも Ivory Tower はかつて Black Vise(AL-4E) と対になるカードとして制限を受けた経緯があり、それが Ivory Tower だけ復活するというのは、やはり言ってしまうと片手落ちだったのですよ。最近のカードがオーバーパワーだから、デュエルを長引かせるための措置を取ろう。そういう発想そのものは間違ってはいなかったとは思うのですが。
そして今回 DarkSteel の発売を迎え、いよいよWoCは「デュエルを長引かせただけで勝てる手段」をデュエリストに与えてしまうようです。しかも噂によると DarkSteel には Ivory Tower まで再録されるという話があります。ちょっと考えてみて下さい。プレイヤーがダラダラとターンを引き延ばすためだけにデッキを作り、それを持ち寄ってデュエルをする。こんなつまらないゲームって他にあるんでしょうか。 (^^; それで成功しているゲームの実例があったら、是非とも私に教えて頂きたいものですが。そんなデュエルを観戦させられるギャラリーはたまった物じゃないですし、それを競技イベントの決勝辺りでやられた日にゃあ、GAMEぎゃざのライターはどういうレポートを書けば読者を盛り上げる事ができるのでしょうか(笑)。あと何よりも、そんなデュエルに長々と付き合わされた対戦相手が気の毒な気がします。確かに最近の Magic はデッキの高速化が問題になっています。でも何か根本的に解決策を間違えているだろう。私個人はそんな気がしてなりません。前から言っているように、私個人は“セラ天やナムジンが活躍できるような環境の復刻”がベターだろうと思っています。そういう Magic が面白くてこの世界に身を投じてしまった人は山ほどいるからです。しかし昨今の Magic は明らかにそれとは別の道を歩みつつある。それで成功してくれるならいいのですが、現実は数年前の失敗を未だに成功だと思い込んで突っ走っているんですよね。これじゃあ世界的にも廃れて当然でしょう。
今WoCが真剣に考えるべきは「自分達が作ったカードをどれだけの人達が面白いと感じ、また買って遊んでくれるか。」という問題なのです。確かにデュエルを長引かせただけで勝てるカードは、一部のデュエリストにとっては格好の研究対象になるかも知れません。でもそんなカードを“使われて”「面白い」あるいは「楽しい」と感じるデュエリストは果たしてどの位いますかね。何よりもあなた達が今までにそういうデュエリストを育ててきていないじゃないですか。何かあれば Standard だ Limited だ、競技こそ Magic を楽しむ唯一の手段だ。そうやってデュエリストにカードを楽しむ事をさせてこなかった。それで今更「こんなカードを作ってやったから楽しんでくれ!」とか言われたって、私に言わせると「こいつら何を寝言で言ってるんだ?」という感じです。いい加減にそういう小手先の工夫でデュエリストを騙そうとするのはやめてもらえませんかね。これじゃあいよいよ Magic の衰退は誰にも止められないでしょう。何よりもメーカー自身にそれを止める意志がないのですから全くお話になりませんよ。
これはポータル発売時にも書いた意見なのですが、私としては「そういうカードを出すなら、それこそ数年前からしっかりとした根回しや土壌作りをしてから出して下さい。」と言いたい訳です。以前出された“願いカード”にしても、本来ならかなり楽しい使い方ができたはずなのに、結局のところ競技デッキでいかに勝つ手段にするかしか話題にならなかったでしょう。誰かが大きな大会で勝てるデッキを作れれば高値が付き、そうでなかったら紙屑扱い。それと同じ結果になるのが発売前から見えている。だから私は文句を言っているだけです。何かこの期に及んでWoCは分かっていないみたいなので・・・。ただWoC関係者には申し訳ないですが、デュエリストや販売店はあなた方が考えているほどバカでもなければお人好しでもないですよ。