今回は「公開情報のみで日本のTCG市場を推定する」というお話を。 帝国データバンクが発表している企業年鑑によると、2002年3月期のHJの売上は約80億円だそうです。1997年3月期において、HJの売上に占める Magic の比率は約50%程ありました(公取委発表)。この比重はその後は一旦大きくなっていると思われるのですが、どうも2002年3月期においてはそうではなくなっているようです。少なくとも2002年3月期のHJの業務内容は“主:出版業/従:ゲーム開発&販売と卸業”になっています。従って現在ではHJの売上に占める Magic の割合は50%を割っているものと思われます。仮にここではそれを50%と仮定すると、2002年3月期のHJから見た Magic の売上額は約40億円となります。今回は計算を簡素化するために売上をすべてパックに置き換えますが、仮にパックの卸売価格を定価の50%(=210円)と仮定すると、HJからこの年度に出荷されたパックの販売数量は約1900万個(=約52万BOX)という試算ができます。
これに対して、日本グローバル証券が発表している“モーニングアイ”という投資家向け情報があります。これによると2003年3月期のデュエル・マスターズの売上は、メーカー出荷額ベースで約44億円となっています。これに先程の仮定(=パックの卸売価格は定価の50%《=75円》)を適用すると、この年度のデュエル・マスターズの販売数量は約5800万個となります。1BOX辺りの収録パック数は・・・24個位なんですかね。 (^^; そうすると約240万BOXになるかと思います。(間違っていたら各自で再計算しておいて下さい《ぉ。)
どうでしょう。比較している年度に1年ズレがあるのですが、金額ベースで比較すると両者にはほとんど差がないようにも見えます。( Magic に関しては基本的には非公開情報ですので、そもそも比較が難しいでしょうけど。)ところが数量比較をすると、これが3倍以上の大差になるのです。で、実際問題として世の問屋さんとか販売店さんは、ほとんどが“数量比較”によってゲームの売れ行きを調査・検討しているのです。それは例えば携帯電話や自動車あるいはビール(発泡酒)等、大部分の業種で同じだと思われます。日本国内の流通関係者には現在「デュエル・マスターズは Magic の3倍(BOX換算だと実に4.5倍以上)売れている。」という情報が出回っているはずです。それで「いや Magic だってちゃんと売れているじゃないか。」と言ったって説得力なんかありゃしないのです。しかも試算内容を見て頂ければ一目瞭然ですが、少なくとも Magic の売上はかなり高めに見積もってあります。実際にはこれより更に少ないはずで、そうなると両者の格差はかなり歴然とした物になります。というか、万が一HJの売上がすべて Magic であったとしても、それでもその販売数量はデュエル・マスターズに及んでいないのです。
「この Magic の売上には並行輸入分が含まれていないじゃないか。」確かにその通りです。でもどうでしょう、現在多くの並行輸入分 Magic が“WoC→海外の代理店→並行輸入業者→デュエリスト”という経路で流通していると思われます。従ってそこでいくら Magic が売れようが日本国内の販売店にはほとんどお金が落ちない。つまりは何の関係もないのですよ。むしろその経路での Magic が売れているというのは、裏を返せば“日本国内の業者が Magic 販売に手を出してもしょうがない”事の証明にしかなりません。従って「そんなTCGをイベントまで開いて頑張って売る理由はない。」という結論しか導き出されないのです。あと Magic はデュエル・マスターズ程の知名度が無い、故に潜在的なユーザー数は少ないと予想されます。そうなると仕入れたパックがデッド・ストックになる危険性はデュエル・マスターズよりもかなり高い訳で、故に Magic は販売店に仕入れてもらえない=売ってもらえない商材になっている可能性が高いのです。
別に私個人が持っているデータや情報を詮索しなくたって、世の中で公開されている情報をちょっと集めただけでも、この程度の試算は十分に可能なんですよ。でも世の中の流れは相変わらず“臭い物には蓋”なようですし、しかもそういう流れに迎合する“世の中を見ていない方々”があんな所やこんな所にもいらっしゃるようで・・・。あ、ちなみに言うと、前から書いている“日本国内での玩具の売上に関するランキング”もインターネット上で発表されている公開情報です。(「日本のおもちゃ情報」で検索すれば見つかると思います。)私が書く意見に食ってかかるなら、せめてこの程度の下調べ位自分でしてから来ましょうや。 (^^;