革新という名の破壊( 2004.5.8 )
 最近出ている某TCGの最新カードの情報を元に、知り合いの方々と色々な機会に密談を重ねております。それで、その中で出ている概ね一致した2つの見方があって、1つは“もうあのゲームはネタ切れである”というのと、もう1つは“今や末期的あるいは刹那的ですらある”という物です。2年前に出したカードの事を考えていないし、2年後に出すカードの事を考えていない。本当今この瞬間だけカードが売れればそれでいい。そんな発想しか持ち合わせていない印象すら受けます。

 これは某TCGに限らず、我々は基本的には先人が敷いた線路の上を歩んでいます。その道がある目的地に到達するのに、一見するともの凄く遠回りをしている。それについても実は先人なりに考え抜いた結果だったりするのです。それを「ここの垣根をぶち抜いて道路を敷けば近道ができる」という発想、あるいはそれを実行に移してしまう行動は、実を言うと斬新でも何でもありません。そういう行為を我々は一般的に“破壊”と呼んでいるはずです。それだったら今ある垣根を壊すのではなく、現状の生活に影響を与えない全く別の場所にバイパスを敷くか、それこそ道路を歩むのをやめて空を飛ぶとか地中を進む位の発想をすべきです。現実世界ではともかく、ゲームの世界ではそれが可能なはずですので。しかしそこまでの労力をゲーム開発にかけたくないし、昔からのファンを相手に無難に商売がしたい。だから“斬新さ”を口実に世界の破壊を繰り返す。そうやって現に多くのゲームがこの世を去っていきました。

 それと日本でも過去に多くのゲームが“斬新さ”“目新しさ”で商売をし、同時に“獲得したファンの維持”という視点を失ってこの世から消えていきました。じゃあそれで某TCGは具体的にどういう結果を招いたのでしょうか。それは4ヶ月に一度というエキスパンションのリリースにプログラム開発が追い付かず、トラブル続出で多くのユーザーから不満が爆発しているオンラインゲームの惨状です。ゲームを作る側の発想や思想がユーザーの期待する物とは程遠く、あまつさえそれが満足に実現できてもいない。これでゲームが廃れない、あるいは滅ばない方が普通はどうかしているでしょう。彼らが行っている世界の革新は、その彼ら自身にすら追い付けないスピードで進んでしまっています。それにユーザーが追い付けるはずもない。だから大量の脱落者が出る。そんなごくごく基本的な話も彼らには分からないのでしょうか。

 自分が持っている思想とやっている施策、そこにいかに多くの問題点や矛盾点があるか。これだけ色々な問題が起こってなお、彼らはそれに気が付かないのでしょうか。自分達が作るゲームが、なぜ先人の作った物ほど人気や評価を得られないのか。それが分析できるなら別に構わないのですが、今や彼らにはそういうスキルすら無さそうな気がします。だったら昔の発想に戻して一からやり直すしかないんじゃないのか。私が言ってきたのはたったそれだけの事なのです。ただし、そう言っている私自身「もう、とうの昔に手遅れだがな」という印象を持っているのも事実なのですが。




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