“知名度”のお話( 2004.9.16 )
 以前、研修を受けさせていただいた稲葉製作所の専務さんのお話を再掲させていただきます。

「いくらイナバが他社とは抜き出た良い物置を作っても、お客さんがイナバを知らなければイナバの物置は売れない。だから我々はイナバという会社を知ってもらうためにCMに力を入れているんだ。」

 ひょっとするとあのイナバのCMをご覧になられている方の中には「イナバはチャラチャラしたCMで露出して、大して質の高くない物置を誇張して売ってるに違いない。」等と考えていらっしゃる方がいるかも知れません。しかし実際は違います。イナバの物置は他社の製品と比べてもクオリティがやはり一歩抜き出ています。(その代わりお値段も一歩抜き出てますが。 (^^; )そういう良い商品がなおかつ知名度が高いというのは、売る側から見ると非常に売りやすいのです。物置の購入を計画されたお客さんの多くは、まず第一に「100人乗っても大丈夫なイナバを見てみよう。」という感じで店に来られるからです。そうなると売る側の説明は大幅に省略でき、具体的な仕様の説明とか見積もりといった話に入りやすいのです。

 この発想は多分ゲームというジャンルにもそのまま当てはまるだろうと思います。いくら良いゲームがあったとしても、ゲームを遊ぶ人がそのゲームを知らなければやはり売れないのです。言い換えると良いゲームを宣伝して知名度を上げるというのはメーカーの義務であり、それができていないというのはやはりメーカーの手抜きでしかないのです。例えばショップにAとBという2種類のゲームが並んでいたとしましょう。AはBに比べて、実際に遊んだ人達には「面白い」「長く遊べそうだ」という感想を述べる人が多い。そうなるとひょっとするとAはBに比べて仕様的には優れているゲームなのかも知れません。ところがAはBに比べて単価が高く、その上店に来るお客さんはAというゲームの名前すら知らない人がほとんどです。しかもAには世界観やルールを説明するための資料も無く、お店がAを売る際はそれこそ店員が一から全部説明しなければなりません。それに対してBはマスコミなどでPR戦略が打たれていて、それこそお客さんが一目見ただけで「あ、Bのゲームがある。」「これ買いに来たんだ。あって良かった。」と買っていく。じゃあ果たしてお店はAとBどちらのゲームに力を入れて売ろうとするか。そんなの議論するまでもなく結果は見えています。もし間違って、あるお店が何らかの理由でBよりもAの販売に力を入れたとしたら、このお店はBを売る際の何倍もの苦労をしなければいけないでしょう。昔のAはそこまでして売る価値があったのかも知れません。でも今は果たしてどうなんでしょうね。

 ゲームにとって知名度アップというのは、言ってしまうと“商品の一部”なのです。特に多くのユーザーのコミュニケーションがゲームシステムの大前提になっているTCGのようなゲームでは、ユーザーを集めることはメーカーにとって半ば義務なのです。マンガやアニメによる集客は気に入らない。じゃああなたが好きなそのゲームは、そういう手段に変わる集客に向けた努力を行っているでしょうか。ひょっとすると全く何もしていないか、逆に“客をゲームから遠ざける販促”しかやってないんじゃないですか。だとしたら果たして、どちらのメーカーがユーザーや販売店から見て“頑張っている”と言えるのでしょうか。BのメーカーがAのメーカーよりも販促やユーザーサポートを頑張っている。だったらBがAよりも売れるという状況にならなければ、誰も馬鹿馬鹿しくて販促なんてやりません。そしてやっぱり現実はそういう“なるべくしてなった結果”に落ち着くものなのです。

 皆さんがそのゲームが好きなのはもう十二分に分かりました。でもだからといって、そのゲーム(あるいはメーカー)のやることなすことを無条件に肯定するというのは、結果としてはそのゲームのためにならないのです。それはやがてはあなた自身にも跳ね返ってきて、文字通り持っていたカードが紙屑になる結果しか生まないのです。はっきり言って宣伝にしか金をかけないゲームメーカーも大問題なのですが (^^; 少なくともやるべき事をやっていないメーカーに対しては、やはり毅然とした態度で物を言うべきだろうと思います。何よりもあなた自身の懐にも大いに関わってくる問題なのですから。




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