LOREENA McKENNITT ---------- ELEMENTAL
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Loreena McKennitt Website(オフィシャル・サイト)からmp3,wave等で試聴ができます---CD画像をクリック |
アイルランドの古謡をマッケニットがアレンジした物です。古い歌のご多分に漏れず歌詞が大変わかりにくく、翻訳に苦労しました。それほど難しい文章ではないのに却って現代の文法知識に当てはまらなかったり、辞書に当たってもその用法が無かったりで、幾通りもの解釈ができて、果たしてこれでいいのか自信が持てません。もしかしたら全く的はずれな訳かもしてませんが、ご愛敬ということで許してください。余りに意味が重層的で、それこそSheが単なる恋敵の女性を指すのかそれとも愛しい人が乗って去った船を指すのかそれすらわからなくなって、古謡ならば歌詞の異本が見つかるかとKellswaterで検索しました。その結果、この歌は男性が女性のことを歌う歌であることや、もっと単純な内容であることがわかってきました。 第一聯は同じですが、第二聯から歌詞が全く違います。違う箇所を引用してみましょう。 On the hills and the glens and the valleys Grows the softest of women so fine And the flowers are all dripping with honey There lives Martha, a true love of mine. Bonnie Martha, you're the first girl I courted You're the one put my heart in a snare And if ever I should lose you to another I will leave my Kellswater so fair. For this one and that one may court her But no other can take her from me For I love her as I love my Kellswater Like the primrose is loved by the bee. 山や谷や低地には 美しく優しい女性がたくさん生まれる、 花々は蜜を滴らせ、そんなところに私の愛しいマーサが住んでいる。 いとしいマーサ、きみこそわたしが愛を告白した最初の人、わたしの心を虜にした人 もし誰かにきみを取られたら、もうケルの流れの近くには戻るまい。 こいつもあいつも彼女に言い寄るだろうが、誰もわたしからマーサを引き離せはしない ケルの流れを愛するようにマーサを愛しているから、 ミツバチがサクラソウを慕うように…… この前後に"ケルの流れに乾杯"……の連が入ります。 マッケニット版に比べると単純ですが、これならケル川の流れに乗せて愛しい女性への思いを歌う民謡として理解はたやすくなります。反面、これでは平凡でどこにでもある歌になってしまい、Kellswaterの歌としての魅力が半減してしまうことも確かです。 女性が、一途な愛を過激なまでに、そして愛らしく熱く歌い上げることで、平凡な恋歌から一編の物語が繰り広げられる歌に変容したのは、今日のわたしたちのドラマ性への好みをよく知っているマッケニットのストーリーテラー的才能が遺憾なく発揮された結果であると思います。 Kellswaterについてのその他の資料は少ないのですが、The Traditional Ballad Indexというサイトで "Kellswater; Lover's curse"――恋人の呪いというテキストがあるのを発見。それによると、 『ある女性が、自分の愛しいウィリーに言い寄る他の女性を呪ってやると言う。父親が彼女に二つの選択を迫る、引き留めないでウィリーを遠くに行かせるか、それとも彼の死ぬのを見るか二つに一つだと。娘がこの選択を拒んで蔑むと父は娘を幽閉してしまう。ウィリーは彼女をおいてアイルランドを離れないと誓う』 作者不詳、初出が1907年。 簡単なノートにも、『Sam Henry版は視点が混乱している。ある部分は第三者の口から語られるが、女性と男性の口から語られる部分もある。多分他のテキストからの混用であろう。しかしこれによって大筋が損なわれることは無かった』とありました。 どうやらマッケニットはこの「恋人の呪い」バージョンを利用したように思われます。 |
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