オクラホマ州ダストホール生まれ
インディアンの寄宿学校で8年間学び、オクラホマ州立大に進む。
1944年陸軍に入り欧州戦線の従軍。
戦後オクラホマ大でジャーナリズムをニューメキシコ大では英文学を専攻、新聞記者生活に入る。
UP通信サンタフェ支局長やニューメキシコ紙の編集局長を歴任後、ニューメキシコ大学のジャーナリズムの教授になる。現在は作家に専念。
主な作品
時を盗む者(A Thief of Time)1988 | |
黒い風(Dark Wind)1982 | |
話す神(Talking God)1989 | |
コヨーテは待つ(Coyote Waits)1990 | |
聖なる道化師(Sacred Clowns)1993 | |
死者の舞踏場(Dance Hall of the Dead)1983年 | アメリカ探偵作家クラブ最優秀長編賞(MWA)受賞作 |
(いずれもハヤカワミステリアス・プレス文庫収録)
(株)DHC
トニイ・
ヒラーマンのネイティーブアメリカンのナヴァホ
族警察を主人公にした作品の数々は、西部アメリカの大自然を舞台に展開されます。
警部補のジョー・リープホーンを主な主人公とした作品、
ジム・チー巡査を主人公にしたもの、
二人を主人公にした作品
の三種類があります。
リープホーンはアリゾナ州立大学からFBIアカデミーへと進み、チーはニュー・メキシコ大学を卒業した、エリートです.
トニイ・ヒラーマンという人は、近代的な考え方を持つリープホーンは白人としての、ナヴァホ族の古いしきたりを重要視するチーはアメリカインディアンに興味を持つヒラーマンの、両方の考え方を合わせ持つ性格の人といえるかもしれません。
ナヴァホ族はアメリカインディアンの中でも最大の部族で、アメリカ西南部のニューメキシコ州とユタ州にまたがるナヴァホ族居留地に約16万人が居住しています.ナヴァホ族の居留地で事件がおきた場合、ナヴァホ族警察には殺人事件の捜査権が制限され、
直接の指揮権はFBIになってしまいます。車のひき逃げ事件や窃盗・傷害事件などには捜査権があります.こんなミステリーの中からもアメリカ社会のひずみが感じられます.
ナヴァホ族はホズロ(調和)を神々の教えとして大切に守り、争いを好まず雨の少ない西部の居留地で静かに暮らしています.
ナヴァホ族の文化は現世のための物であり、家族を何より大切にし、物的な所有については価値を認めず、女性を平等に尊敬の念をもって扱います.
ケビン・コスナーの監督主演した”ダンス・ウイズ・ウルブス”は最近のアメリカ社会の流れを受けて、インディアン(スー族)との間に、友好の道はなかったのかという反省の上に立った視点で描かれています.
トニイ・ヒラーマンの作品の全ての映画化権をロバート・レッドフォ-ドが買ったそうです。”黒い風”はすでに彼により映画化されたのですが、日本では公開されていません。”リバー・ランズ・スルー・イット”でモンタナの美しい自然を描いたロバート・レッドフォードがどんな映像にまとめあげたか、とても興味があります。
ブラックメサと呼ばれる作品の舞台となった西部のユタ州へいつか行ってみたいと思っています。次回の冬季オリンピック開催予定のソルトレイクシティーにも近いようです.
最近読んだ村山由佳さんの「翼」は、舞台がコロラド州になっていて、ナヴァホ族についてもかなり詳しく書き込んであり、思いがけなく楽しめた一冊でした。
毎日新聞にトニイ・ヒラーマンのインタビュー記事が載ったが、インディアンについて
「米国人は彼らを原始的で未開、洗練されていない文化の持ち主と思っている。しかしそれは正しくない。彼らは興味深い文化を有し、それは独特の価値体系に根ざしている。彼らの神話には生命に関する彼らなりの進化論がある。人間とか精神、自然にたいする考え方は非常にユニークだ。家族を大切にし、物質的な豊かさにはあまり意味をおかないことなど米国人は大いに学ぶべきではないのか...私はまだまだ彼らから学ぶ過程にある。」
と書かれています。
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