シンポジウム『北陸地方における標識調査』
11月15日 13:10〜15:10 進行 笹原 裕二(石川)
<企画趣旨>
2001年の渡良瀬大会の際に行われた『標識調査の意義』のシンポジウムでは、標識調査によって鳥類の渡りの生態を国際的に解明するだけでなく、希少種の保護や、地方の鳥類の生息環境の保護に大きく貢献することが示された。
多くの人々の理解を得て、豊かな標識調査をするためには、地方単位に主要な標識調査を紹介して、標識調査の意義を、全国に向けてはもちろん、地元の各方面の人々に明らかにする作業が大切である。また、そのような紹介をする過程を通して、より意義の深い標識調査はどのようにすればできるのかを考えることができる。
本シンポジウムでは、この標識大会の開催を行なった北陸地方(北陸3県)について、以下のような主要な標識調査について紹介し、今後の課題を探った。
北陸地方には、福井県織田山と富山県婦中の1級ステーションにおいて1970年代初頭から、鳥相の長期的モニタリングが可能な調査が行われてきた。まず米田様に、織田山1級ステーションの長期的な活動を通して何が見えてきたのかの話をしていただいた。また富山県で婦中ステーションの調査に長年かかわられ、また富山県とロシア・ウラジオストックとの標識調査の交流事業を進めてこられた湯浅様より、交流活動を中心に紹介していただいた。
石川県では、ラムサール登録湿地やガンカモネットのサイトとなって国際的に活動している片野鴨池について山本様から紹介していただいた。ここでは、ヒシクイやトモエガモなどガンカモ類の渡りや生態解明・保護に焦点が集まっている。今回はマガモの研究を中心に紹介していただく。また石川県でチュウヒの継続的標識調査をしてきた中川様から、ミユビシギの渡りに関して報告をしていただいた。福井県敦賀市にある中池見湿地は、国内の湿地保護運動の焦点となっている場所の一つである。中池見湿地の保護と標識調査について吉田様に報告していただいた。
最後に、「地方単位の活動をいかに広報するか」という点についてみなさまからのご意見を得た。
今回の講演で紹介された北陸の調査地 |
<講演>
1.織田山ステーションの標識調査:米田重玄(山階鳥類研究所)
2.ロシア沿海州地方との渡り鳥共同調査:湯浅輝久(富山県自然博物園ねいの里)
3.ガンカモネットに参加した石川県片野鴨池におけるマガモの調査活動:山本浩伸(日本野鳥の会サンクチュアリ室)
4.ミユビシギの渡り:中川富男(石川)
5.敦賀市中池見湿地の保護と標識調査:吉田一朗(福井)
<まとめ>
今後の課題を探る上で、以下のような点に注目して会場からも意見を得たい。
○今回報告いただいた標識調査以外にも北陸地方では多くの調査が行われている。それらの点について簡単に参加者からの紹介があった。⇒石川県については笹原裕二さんから根上海岸林や河北潟のチュウヒ、金沢市普正寺の森の調査について、福井県については三原学さんから大野市平家平や福井県自然保護センターでの調査の概略を報告があった。
尚、日程が合わず16日の一般講演となったが、石川県金沢市のビルで営巣したハヤブサの営巣環境改善と標識調査について発表された「ハヤブサの人工営巣(主に金沢)の繁殖成功と雛のバンディング:松村俊幸(福井県自然海浜センター)」がある。
○今回の報告をまとめるだけでも、北陸地方の標識調査が、地域の鳥類相や鳥類の生態の解明、多くの生物にとって重要な湿地の保護などに重要な役割を果たしており、またこれからも果たすと確認できた。
○標識調査を実施するためには、多くの人々の協力や理解が今後とも必要であり、そのためには、北陸地方で行なわれている標識調査活動の意義を多くの人々に伝える工夫が必要である。
○今回おこなったようなシンポジウムを、北陸地方だけでなく、各地方単位に、標識協会大会のシンポジウムや標識協会誌の特集号という形で企画し、その結果を今後作成予定の標識協会のホームページなどを通して広報していくことによって、標識調査の意義を地方単位に示すことができると考える。
シンポジウムの様子
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