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食の安全と流通改革 (農業情報学会シンポジウム2003春) .2003.3.18-19 |
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東京で開催された、農業学会主催の「食の安全と流通改革」に関するシンポジウムに参加しました。最近話題のトレーサビリティ-や生産情報の開示など興味があったのですが、なかなか全体像をつかむことが出来ずにいました。今回のシンポジウム参加で、全体像がおぼろげながら見えてきたように感じます。 私のとらえ方がまだ不十分ではありますが、大会に参加したときのメモを公開します。参考にしていただければありがたいです。(2003.3.21) |
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斎藤京子(農林水産省総合食料局消費生活課長) | |
・「食の安全・安心のための大綱」→消費者の視点に立った安全・安心な食料の供給 ・食品には「絶対安全」ということはないという前提に立ったリスク管理の強化→リスク管理部門の分離・新設「消費・安全局(仮称)」 |
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松田友義(千葉大学大学院自然科学研究科教授) | |
・ 「安全」と「安心」は区別して考えるべき 安全→科学的に分析できるもの。リスク評価の対象。→HACCPなどの導入。 (BSE問題、無登録農薬問題) 安心→消費者の心に働きかけるもの。→トレーサビリティ−の導入。 (産地偽装問題、不正表示事件) ・ 市場流通から市場外流通へ これまでの農産物価格は、市場の成り行きで決まっていた。 →価格に対して責任を取る人間がいない。本当の農業経営とならない。 生産者−(依頼)→JA(手数料)−(依頼)→市場(セリ)→販売店→消費者 安全であるという情報は、それだけでは食品そのものの安全性を必ずしも保証しない。「情報」は「情報」でしかない。情報はそれが真実を伝えているという裏づけがあってはじめて意味を持つ。今のところこの部分が遅れている。HACCP導入工場で食害事件が発生したり,認証団体がいい加減だったり,情報の信頼性を担保するためのシステムが確立していないのである |
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新山陽子(京都大学大学院農学研究科教授、食肉流通問題調査検討委員会委員) | |
・ トレーサビリティの定義 ISO9000:「考慮の対象になっているものの履歴、適用または所在を追跡できること」 EU(欧州連合):「食品、飼料、畜産加工食品、食品あるいは飼料に組み込まれることが意図されているかまたは予想ざれる物質について、生産、加工、流通のあらゆる段階を通して、それらを追い、また遡って調べる能力」 ・ EUが最も積極的にトレーサビリティに対応(1995〜) ・ トレーサビリティシステムは、あくまで食品の追跡、遡及システムであり、システムの確立自体を目的とするような過度な追求にならないようにすべき。 ・ 消費者がトレーサビリティに求めているもの ・ 食品供給とりわけ安全確保のための社会基盤(社会システム)としての役割であり、自社製品の差別化や、プライベートブランドの付加価値を高めるために使われることには不信と拒否感が強い。自己の利益追求のために使っていると受け取られ、利益追求を優先し、消費者の健康保護をないがしろにしてきたことがこれまでの食品事件の背景にあるが、また結局、同じ道をたどるのではないかと感じられているからである。 |
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日和佐信子(全国消費者団体連合会、雪印乳業且ミ外取締役) | |
・ 消費者はいったい何を求めているか。 日常的にパソコンに向かって数値を入力する人は多くない。 要するに安心できる表示をして欲しい。 何かあったときにトレース出来て、被害を最小限に押さえることが重要 ・ 1995年フランスに行ってトレーサビリティシステムがあることを知った。 ・ 当時、日本では、経費がかかるということから相手にされなかった。 ・ 今は逆に、ブームになってトレーサビリティさえ導入すれば安全が確保されると思われており、明らかに行き過ぎている。 ・ リスクとの関係でトレーサビリティを考えていく必要がある。 |
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片山寿伸(認定農業法人 片山りんご有限会社) | |
・ 平成9年のリンゴ価格大暴落を受けて、リンゴの輸出を模索する。 ・ 日本では加工用にしかならない小振りのリンゴを英国での生食用として出荷。 ・ 輸出に際し、情報開示とトレーサビリティが求められる。 ・ 輸入国における生産者の情報開示に関しては、年々厳しくなってきている。 ・ 2004年1月よりEureGAPが発効。必須30項目の条件クリアが義務。 日本国内の食品流通において、必要にして十分なトレーサビリティ確保のシステムが完成すれば、それは日本の消費者にとって意味があるだけでなく、日本産農産物の海外市場開拓の可能性を大きく押し広げることにも繋がり、また外国産農産物との国内競争の場面でも将来必要不可欠な基本条件の一つになると考える。 |
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福田高志(潟Pーアイ・フレッシュアクセス 専務取締役 商品事業部長) | |
・今までは結構いいかげんな表示がまかり通っていた。調査では55%に見られた。 ・そのため、自分で申告しただけではだめで、第三者の認証が必要。 ・市場外取引が無秩序で進んでいる。流通全体の3割から8割が市場外。 ・中央卸売市場だけでなく、すべての青果物取引を対象とした取引条件(PACA)の整備。 ・トレーサビリティ確保のために、情報開示の基準作りが必要。業界全体を対象とした民間でのJ-GAP(Japan Good Agriculture Practice)の設置が望ましい。 ・中国では必要に迫られ、情報開示は日本より進んでいる。中国並みの情報開示を求められると日本が困る事態になっている。 |
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杉山純一((独)食品総合研究所 電磁波情報工学研究室長) | |
・ トレーサビリティシステムの果たす役割は大きく分けて以下の2つ。 O 食品事故発生時の追跡や回収を容易にする。(狭義のトレーサビリティ) O 生産情報等を提供して消費者と「顔の見える関係」を築く。(アカウンタビリティ) ・ 消費者調査ではこれら2つの割合は牛肉で5:5、野菜で1:9であり、ものによって消費者の求めるものが異なる。 ・ トレーサビリティシステムの情報伝達手段として、インターネットのシステムのXMLが注目されており、期待されている。 ・ 世界初の農産物のXML Web サービス、青果ネットカタログを平成14年8月に一般公開し、実運用をはじめた。(http://seica.info) |
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